
AIの出現で弁理士は今後どうなっていくの?
弁理士を目指しているけど仕事がなくなるのか教えてほしい。
こうした疑問に答えます。

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- 特許事務所>法律事務所>現在特許事務所を開設。
- 試験勉強法を発信。資格スクエアのYoutubeチャンネルにて勉強法を発信。
- 弁理士の勉強法は「弁理士試験の勉強時間を1,500時間で合格するための勉強法」の記事で解説。
よくAIの出現により士業の業務はAIに代替されるといわれています。
筆者は開業弁理士ですが、それならば自らAI(人工知能)を学んで人の手がいらない商標出願代行サービスを作ればいいじゃないかと思い立ち、商標のオンラインサービスを自作し、見事に売り上げがたたずに失敗した経験があります。(厳密に独学した言語はrubyであり、人工知能(AI)言語とは言えないですが…。補足すると、人工知能言語を学ぶならPythonがおすすめです。)
筆者の独学のプログラミング言語の勉強法は「プログラミングの独学勉強法【150時間の勉強時間で身につける方法】」の記事をご参考に。
このような経験もあり、筆者は、弁理士業務の中でどれがAIに代替されやすいかを分析・検討してきた経験がございます。
なお、補足すると、弁理士業務の「全て」がAIで「完全」に代替されることは「不可能」です。これは間違いないです。
このため、弁理士がAIに仕事を奪われることはないです。
ただし、弁理士業務の中でも、AIに代替されやすい業務はいくつかあります。そこで本内容ではAIに代替されやすい業務を独断と偏見でランキング形式でご紹介します。
さらに、後半では「むしろ弁理士業務はAIに代替された方がよい理由」もお送りします。
盛りだくさんの内容ですので最後までご覧いただければと思います。
Contents
1.AIに代替されそうな弁理士業務は?
弁理士業務ランキングは以下のとおりです。(筆者の独断と偏見)
なお、弁理士業務についてくわしく知りたい方は「弁理士の仕事内容を分かり易く解説【1日のスケジュールも公開】」の記事をご参考に。
第1位 特許・商標事務
第2位 商標出願(内内)
第3位 商標調査(内内)
第4位 特許翻訳などの翻訳業務
第5位 特許出願(改良特許)
特許の出願業務は安泰と思っています。順番に解説します。
①特許・商標事務
特許・商標事務とは、以下のような手続き業務をいいます。
- 出願審査の請求(特許)
- 登録納付手続き(特許・意匠・商標)
- 年金管理(特許)
- 期限の更新(商標)
- 特許権などの移転登録申請など
なお、特許・商標事務は、特許事務員を雇う場合、弁理士ではなく特許事務員が行うことが多いです。
ただし、一人事務所の場合、弁理士が行うこともありますのでランキングに上げました。
これらは特許庁が指定する様式に従って書類を作成すればよく、AIが得意とする業務でして最も代替されやすい業務です。
昔、「弁理士はAIに代替される確率92%」という報告がされたことがありますが、おそらくこのデータはこのような特許・商標事務も業務に含んでいると考えられます。
今後は、AIツールを使って特許事務が事務手続きを行うようになると予想されます。
実際に今はRPAと呼ばれるロボットを使って特許事務を自動化している特許事務所もあるみたいです。
詳しくは「知財業務にRPAを活用するメリットとデメリット」の記事をご参考に。(別リンク)
②商標出願
次に代替されやすい業務が商標出願(内内)です。
内内とは、「国内」のクライアント向けに「日本国内」に商標出願をすることをいいます。
商標出願とは、商標調査➤商標出願➤中間処理(拒絶理由の対応)➤登録納付の流れのうちの「商標出願」を言います。
出願の書類に限って言えば、それほど難しいものを作成するわけではなく、特許庁が指定するマニュアルに沿って作成すればよいことが多く、AIに代替されやすいです。
実際に、今は商標出願の代行サービスをオンラインで自動化しているサービスもいくつかあり、今後はますます加速化されるでしょう。
なお、商標出願の代行は弁理士の独占業務のため、こうしたサービスは弁理士が提供しています。
自動化できると商標出願の弁理士手数料を安くできます。このため価格競争が起きます。
そうすると、内内の商標出願をメインとする弁理士は稼げにくくなります。
このため、独立開業をするか、特許事務所で働くかいずれにせよ、弁理士が、内内の商標出願をメインとすることはやめたほうがよいと思います。
③商標調査
商標調査とは、登録した商標と類似の商標がすでに出願されているかどうか調査することをいいます。
AIは、これまでの類似判断のデータをもとに、互いの商標が類似しているかどうかを判断することも可能です。
参考:「【日本初】商標調査対決「AI vs 弁理士」イベントでAIと弁理士が接戦!AIは3戦中で1勝ながら」
商標は文字商標に限らず、ロゴといった画像の商標でも可能です。
このため、商標調査と商標出願についてはAIに代替されやすくなり、商標(内内)の出願業務をメインとすることは今後は難しくなることが予想されます。
ただし、その後の中間処理についてはAIで代替することは困難ですので、まだまだ活躍の余地はあります。(ただし、弁理士が商標(内内)だけで食べていくことは今後はいっそう難しいと思います。)
④特許翻訳などの翻訳業務
次に、代替されやすいのが翻訳業務です。
翻訳業務とは、国内明細書を英訳する業務あるいはその逆で海外の英文明細書を和訳する業務です。
特許事務所では、弁理士が翻訳も担当するところもあります。
翻訳業務はAIで最も代替されやすい業務と言われています。特に特許翻訳は、英文のパターンがほぼ決まっており、数ある翻訳の中でもやりやすいものと思われます。
ただし、筆者は数年前(2019年)にトライアルでAIによる翻訳ツールを利用したことがありますが、正直Google翻訳の方がまだいい印象を受けました。
その翻訳ツールに問題があったと思いますが、実際に使った感想としてはまだまだAIに代替されるのはずっと先のような気がします。
⑤特許出願(改良特許)
最後に特許出願の明細書です。
特許出願の明細書については、完全にAIに代替することは不可能と思います。(理由はいろいろありますが、詳しく書くとそれだけで長くなるのでここでは省略しておきます。)
ただし、韓国・台湾などでは特許明細書を自動で作成するツールが登場しているようです。
といっても完成度はよくて60%程度らしく、100%にするために弁理士がさらに手をつける必要があるそうです。(個人的に明細書作成は大変な仕事でして、むしろこうしたツールがあると弁理士はハッピーのように思います。)
ただし、特許の中には、既存特許から少し改良して出願したい場合があります。
この場合、既存の特許出願の明細書を少しいじって出願すればよく、こうした明細書の作成についてはAIでも代替可能であると思います。
ただし、現在のところ、国内ではまだ特許明細書の自動作成ツールは登場していないように思います。
特許明細書のAIの代替は気にしなくてOKです。
2.弁理士業務はむしろAIに代替された方がよい理由
以上、AIに代替されやすい弁理士業務を紹介しましたが、むしろ弁理士業務はAIに代替された方がよいのではと思います。
理由は以下のとおり。
①若手の新規弁理士が活躍できる(新たなビジネスチャンス。筆者は失敗しましたが…)
②弁理士業務がAIに代替されると弁理士の負担が減る(例えば、さきほどの特許明細書の自動化の話。)
③弁理士業務がAIに代替されても弁理士のニーズがなくなるわけではない
要は弁理士業務の面倒な作業がAIで自動化されて、勤務弁理士の負担が減ること、そして独立開業については、事務を雇う必要がないとか大手特許事務所にはない新たなサービスを実現できる、と言った理由です。
なお、弁理士は、AIで自動化されたら知財のコンサル業務をやればいいという話もありますが、コンサル業は弁理士の資格をもとうがもたないができますし、弁理士のコンサル業のニーズってあまり聞きませんし(これは単に筆者の経験不足かもしれないですが…)ちょっと場違いじゃないかと思います。
以上をまとめると、AIに代替されても弁理士の仕事はなくならないと思うのでそこは安心していいと思います。
(余談ですが弁理士の仕事を奪われる怖さは、AIというよりも、むしろ弁理士試験の難易度が低下して外国人(特にアジア圏)でもとりやすくなることと思います。アジア圏の方は相当優秀な方が多いですから。)
3.弁理士とAIのまとめ
弁理士業務ランキングは以下のとおり。
なお、弁理士業務についてくわしく知りたい方は「弁理士の仕事内容を分かり易く解説【1日のスケジュールも公開】」の記事をご参考に。
①特許・商標事務
②商標出願(内内)
③商標調査(内内)
④特許翻訳などの翻訳業務
⑤特許出願(改良特許)
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