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特許の明細書の書き方|【背景技術から効果までの書き方のポイントを5つ】

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本内容では、引き続き、明細書の書き方について以下の2つの構成で解説していきます。

 

 1.「背景技術」~「効果」までの書き方。ポイントは5つあります。

 2.「折り畳み椅子」へのあてはめ

 ※ 今回も引き続き、前回の事例で引用した折り畳み椅子を用いて解説していきます。

 ※ 「実施形態」の書き方については次回解説していきます。

 

本内容では従来技術として「床几」「背もたれ椅子」があると想定しています。

本内容は、審査官が見やすい「背景技術」~「効果」を重点的に解説していきます。

「背景技術」~「効果」までの記載については、過ちをおかしやすいポイントもありますので最後までご覧いただければと思います。

 

なぜこのように書くべきか理由つきで解説していますので、本内容を読み終えるとあなたは「背景技術」~「効果」までの記載をすらすらと書けるようになるでしょう。

余談ですが、クライアントに原稿を送る時は、まずクレーム案と明細書(背景技術~効果まで)を送って内容をフィクスしておくとやり直しも大きくなりませんし、実施形態もあわせて書かないといけないという負担を低減できるのでおすすめです。

 

 1.「背景技術」~「効果」までの書き方。ポイントは5つあります。

①「背景技術」「課題」「解決手段」「効果」では「起承転結」のストーリーで書く

②「背景技術」は書きすぎない

③「課題」と「効果」は書きすぎない

④「解決手段」とは「請求項1」

⑤「課題」と「効果」は表裏一体

 

順番に解説していきます。

①「背景技術」「課題」「解決手段」「効果」では「起承転結」のストーリーで書く

ポイント

「起」「背景技術」

〇〇という技術があった。

「承」「課題  」

しかし、〇〇には△△の問題があった。

そこで、本発明は△△の問題を解消できる✕✕を提供することを目的とする。

「転」「解決手段」

◇◇すると、△△の問題を解決できることがわかった。

「結」「効果  」

本発明によれば、△△の問題を解消できる✕✕を提供できる。

人それぞれの好みにより書き方は分かれますが、背景技術から効果までの記載は起承転結のストーリーで書くように心がけましょう。

 

なお、従来技術として自社の先願特許を引用する場合があります。特に改良特許に多いです。

この場合には、「~の問題がある」と強く否定すると、自社の先願特許の特許性に影響を与えるおそれがありますので、「~の改善の余地があった」というようにぼかして書きましょう。

 

②「背景技術」は書きすぎない

「背景技術」を書き過ぎる特許明細書をよく見かけますが、背景技術は数行でOKです。

書き過ぎると、公知でないものも公知と認めてしまうおそれもありますし、ストーリーが複雑になり発明のポイントが何なのか審査官にうまく伝わりにくくなるからです。。

本発明の特徴と比較しうる文献を1つ用意すればOKです。

なお、文献に開示された技術を説明する時は、その文献のクレームを参考に書けばよく、コピペでもOKです。

変に表現を変えると不要に従来技術でないものを書いてしまうおそれがでてきますので注意しましょう。

なお、課題は背景技術に書いてはダメです。

理由は、課題が当業者に知られていたものでない場合、課題が新規であるものとして進歩性が認められうることもあるからです。

これについて、例えば、特許法概説(第13版)に以下のように記載されています。

「・・・又は、その達成すべき結果が出願前に当業者に知られた技術的課題でなく、しかも当業者が容易に想到できた技術的課題でもない場合は、当該請求項に係る発明は、当業者が容易に想到することができたものではないと考えられる。」

背景技術に課題を書いてしまうと公知と判断されてしまいますので注意してください。(発明者が原稿を書くときよく見られます。)

③「課題」と「効果」も書きすぎない

課題は、従来技術で引用した先行技術の問題点であって、請求項1の全ての範囲で解決できるものを書けばOKです。

効果を書き過ぎると、請求項1の範囲では達成しえないとして、審査官からさらに構成要素を限定しなさいと拒絶理由がくるおそれがあります(特許法第36条第6項1号違反)。

また、特許を取得したあとでも問題になるケースがあります。侵害品が発明品の効果を奏しないことを理由に、侵害品は権利範囲に属さないと言い逃れされるおそれもあります(作用効果不奏功の抗弁。)

書き過ぎないように注意してください。

もし副次的な効果などを書きたければ、実施形態のところで書きましょう。

④「解決手段」とは「請求項1」

解決手段には、請求項1の内容を書きましょう。

ただし、請求項1のコピペはやめておきましょう。

審査官からも各請求項のコピーを避けるように要望があります(参考:日米欧中韓共通出願様式時代「特許明細書等の書き方」鈴木壯兵衛著)。

インクレームである請求項1のみを「前記」などを使わずに以下のように形式的に変えればOKです。

ポイント

【請求項1】

座部材と、二本の脚部を有する脚部材を含む椅子であって、

前記座部材が、前記二本の脚部の一方と連結する座部連結部を含み、かつ、前記座部連結部を中心に回動可能であり、

前記脚部材が、前記二本の脚部を連結する脚部連結部を含み、かつ、前記二本の脚部が、前記脚部連結部を中心に回動可能であり、

前記椅子が、使用者が前記座部材に着座できるように、前記座部材の回動を制止するストッパー部材を含む、椅子。

ポイント

本発明の椅子は、座部材と、二本の脚部を有する脚部材を含む椅子であって、座部材が、二本の脚部の一方と連結する座部連結部を含み、かつ、座部連結部を中心に回動可能であり、脚部材が、二本の脚部を連結する脚部連結部を含み、かつ、二本の脚部が、脚部連結部を中心に回動可能であり、椅子が、使用者が座部材に着座できるように、座部材の回動を制止するストッパー部材を含む。

⑤「効果」と「課題」と表裏一体

最後に、「効果」は「課題」と記載を統一しましょう。

例えば、以下のような感じです。

・課題

 本発明は、収納性と耐久性に優れる椅子を提供することを目的とする。

・効果

 本発明によれば、収納性と耐久性に優れる椅子を提供可能である。

課題と効果の文言や表現が異なると、背景技術から効果までのストーリーが伝わりづらくなります。コンパクトに記載しましょう。

なお、【発明の効果】は必ずしも記載する必要はありません。

先ほど解説したとおり、効果を書くとサポート要件違反が通知され、構成要素を限定せざるをえない場合もあります。

そこで、こうしたリスクを避けるためにあえて書かなくてもよいです。

では、背景技術から効果までの書き方がわかったところで、実際に「折り畳み椅子」に当てはめてみましょう。

 

2.事例へのあてはめ

以下では事例をあてはめながら書き方のコツも解説していきます。

 

「起」「背景技術」

 人が座るための床几という技術があった。

「承」「課題  」

しかし、床几には、座部材の材質が革や布であることにより、破れやすく、耐久性に問題があった。

 ここで、座部材の材質を剛性部材とすることが考えられるが、そうすると床几を折りたたむことができないため収納性に問題がある。

 そこで、本発明は、収納性と耐久性に優れる椅子を提供することを目的とする。

「転」「解決手段」

本発明者らは上記問題について鋭意検討したところ、座部材及び一対の脚部材を含む椅子において、下記(1)~(3)を含む構成とすることにより上記問題を解決できることを見出し、 本発明を完成した。

(1)座部材が、一対の脚部材の一方の脚部材と連結する座部連結部を含み、かつ座部連結部を中心に回動可能であること

(2)一対の脚部材が、一対の互いの脚部材を連結する脚部連結部を含み、かつ、脚部連結部を中心に回動可能であること

(3)使用時において、座部材を係止し、使用前及び使用後において、座部材の係止を解除するストッパー部材を含むこと

「結」「効果  」

本発明によれば、収納性と耐久性に優れる椅子を提供できる。

 

これは「課題」と「効果」の設定がよくない例です。

どこかわかりますか。

 

課題と効果の文言によれば、座部材は自ずと材質が剛性部材であることが必須のように解釈されます。

請求項1では座部材の材質は特定されていません。

そうすると、請求項1と課題・効果に統一がありません。

 

そこで、耐久性という課題・効果は本発明では不要であり、収納性でOKです。

そうすると、従来技術と本発明は、効果が同じであり有利な効果として参酌されるのかと思われるかもしれません。

これに対し、審査基準には明確に規定されていませんが、特許法概説(第13版)によれば、参酌されうると判断しています。

 「効果が従来技術と同一と認められる場合においても、従来技術と全く異なる解決手段(構成)を創作しているときは、 これと同一視すべきではなく、新しい解決手段を提供した点(技術の豊富化)において効果は顕著であるとすべきである。」

ここで、効果が同じだから、起承転結のストーリーが書きづらいと思うかもしれません。

そこで、方法としては、背景技術の技術レベルを1つ落とすことが考えられます。

事例では、「床几」の引用をやめて、背もたれ椅子を引用すればOKです。

 

そうすると、背景技術~効果までの記載は以下のようになります。

「起」「背景技術」

 人が座るための背もたれ椅子という技術があった。

「承」「課題  」

しかし、背もたれ椅子は持ち運びに不便という問題があった。

そこで、本発明は、持ち運びが容易な椅子を提供することを目的とする。

「転」「解決手段」

本発明者らは上記問題について鋭意検討したところ、座部材及び一対の脚部材を含む椅子において、下記(1)~(3)を含む構成とすることにより上記問題を解決できることを見出し、 本発明を完成した。

(1)座部材が、一対の脚部材の一方の脚部材と連結する座部連結部を含み、かつ座部連結部を中心に回動可能であること

(2)一対の脚部材が、一対の互いの脚部材を連結する脚部連結部を含み、かつ、脚部連結部を中心に回動可能であること

(3)使用時において、座部材を係止し、使用前及び使用後において、座部材の係止を解除するストッパー部材を含むこと

「結」「効果  」

本発明によれば、収納性に優れる椅子を提供できる。

 

こんな感じで【背景技術】~【効果】までをコンパクトに書くことが可能です。

ワード1ページ文だと書きすぎです。

簡潔に翻訳しやすいように表現を統一することがコツです。

お客さんがこれを見ると手抜きしている印象をもつ方もいますが、そこはコメントでこのようにした意図を説明すれば理解してもらえます。

では次回は実施形態の書き方を解説します。(更新予定)

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