
研究職から知財部へ異動したいけど断られたから特許事務所に勤めようかなあ。
けれど特許事務所ってどんな所だろう?もう30歳だし、転職に失敗したくない。特許事務所で働くことのメリットとデメリットを知りたいなあ。
あとは求人の探し方から特許事務所はどういうところがおすすめなのかも知りたい。。
こうした疑問に答えます。
・本内容の構成
1.特許事務所とは
2.特許事務所で働くことのメリットとデメリット
3.特許事務所のランキング
4.特許事務所の求人の探し方
5.特許事務所のまとめ
筆者は、これまでに特許事務所・法律事務所を3か所入職し、現在はFOX国際特許事務所を運営している弁理士であり、特許事務所の情報に詳しいです。
なお、本内容では、ランキング形式にて、具体的な特許事務所を開示していますが、あくまで客観的なデータに基づく評価指標の1つに過ぎず、優劣を示すものでもなく、個別の主観による評価を示すものではないことにご留意ください。
本内容を読めば、特許事務所で働くことの概要を理解できるとともに、あなたに合った特許事務所はどこか見つけることができるでしょう。
1.特許事務所とは
特許事務所とは、弁理士個人による代理業務を補助するために開設する事務所です(参考:Wikipedia「特許事務所」)
ここでいう代理業務とは、主に「出願代行」「裁定代行」「鑑定」の3つがあります(弁理士法第4条第1項)
簡単に言うと、「出願代行」「裁定代行」とは、特許・商標などの知財を権利化をサポートする業務であり、「鑑定」とは、例えば、他社製品が特許権の侵害に該当するか否か、あるいは自社製品が他社の特許権の侵害に該当するか否かなどを鑑定する業務をいいます。
これらの代理業務は弁理士でないとすることができません(弁理士法第75条)。
このため、特許事務所は弁理士を主体として構成されています。
たいていの特許事務所には、さらに補助業務を行う特許技術者・特許事務員がいます。
特許技術者は、弁理士の資格をもたない方であり、「弁理士の管理・補助の下で」これらの代理業務を行います。
特許技術者が、単独で代理業務を行うことは違法であり(弁理士法第79条)、裁定権がないことにご留意ください。
特許事務員は、電話対応・国内外顧客・外国代理人へのレター作成・期限管理などの仕事を行います(参考:SAMURAI MAGAZINE 「特許事務の仕事内容を業務別に解説します」)
あなたが、研究開発出身であり、弁理士の資格をもっていないのであれば、まずは特許技術者からキャリアをスタートすることになります。
では、特許事務所で働く場合、弁理士・特許技術者・特許事務員の待遇はどのようなものか。以下に解説していきます。
1.1.特許事務所の給与・待遇
所員の給与は、実績あるいは出来高を反映した給与となることろがほとんどです(参考:Wikipedia「特許事務所」)。
ただし、弁理士・特許技術者のケースであり、特許事務員の場合、給与は企業の正社員の給与システムと同等が多いです。
弁理士・特許技術者・特許事務の平均年収は以下のようになります。
弁理士 | 特許技術者 | 特許事務員 | |
---|---|---|---|
平均年収 | 723万円 | 500~600万円 | 400万円程度 |
参考記事・メディア | 転職会議 | リーガルジョブマガジン | リーガルジョブマガジン |
筆者は弁理士ですが、周りの話を聞いたりしていると、上の平均年収に大きな開きはないといえます。
特許事務所の給与は、一般の企業と比べると、高い傾向にありますがここに少し落とし穴があります。
それは社会保険に加入していないところもあるという点です(参考:Wikipedia「特許事務所」)。
特許事務所では特に退職金を設けていないところもありますので、この点はしっかりと各特許事務所のウェブサイトで確認するか面接で問い合わせてください。
また、特許事務所の多くが実力主義の傾向にあります。
Wikipedia(「特許事務所」)によれば、実績が上がらない所員は簡単に解雇されるとあります。
ここまでは言いすぎでしょうが、前年度の年収が減少することはあります。
また、言い換えると、一般の企業と比べてあなたの実力次第では、若いうちからも年収を上げることも可能です。
年収を上げる方法については過去記事でも解説しているので参考にしてみてください。
-
-
弁理士の年収の現実と高収入を目指す稼ぎ方
続きを見る
1.2.特許事務所の勤務形態
特許事務所は一般の企業と勤務形態(労働時間・休日)はほぼ同じです。
たいていの場合、勤務時間は9時~17時30分までであり、土日祝日は休みです。
また、特許事務所ではフレックス制度を採用しているところが多く、朝10時に出勤したりすることも可能です。
このため、満員電車を避けることもできますし、もしあなたが弁理士試験の受験生であれば、脳が活発化する朝に1時間試験勉強をしてその後出勤するということも可能です。
また、在宅制度をとるところも多いため、あなたに合った働き方を実現しやすいことも特徴です。
下の写真は特許事務所を含む知財の求人サイト「パテントサロン」の求人情報ですが、下の写真を見るとわかるように在宅をとりいれているところが多いです。
引用:http://www.patentsalon.com/jobs/offer/index.html(2020年8月4日現在)。赤い枠は筆者が追記。
特許事務所がどういうところか理解できましたでしょうか。
では、次に特許事務所で働くことのメリットとデメリットについてわかりやすく解説していきます。
2.特許事務所で働くことのメリットとデメリット
メリット・デメリットについては筆者の個人的な感想によるものであり、デメリットはあなたにとってはメリットになるかもしれませんし、メリットがあなたにとってはデメリットになるかもしれません。
あくまで参考程度にとらえてください。
特許事務所で働くことのメリットについてまとめると以下の5つになります。
①実務を積むと安定する
②サラリーマンの問題点が解消される
③英語を活かせる
④自由な働き方を実現できる
⑤若いうちから稼ぎやすい
特許事務所で働くことのデメリットについてまとめると以下の5つがあげられます。
⑥特許事務所の多くが都市部に集中
⑦デスクワーク中心。健康に気を使う必要がある
⑧期限厳守の世界。辛い人には辛い。
⑨地味な仕事であり、陽の目を浴びにくい
⑩情弱だとブラック特許事務所に入りやすい
順番に解説します。
2.1.①実務を積むと安定する
特許事務所では、知的財産権の代理業務を担当します。
専門性の高い仕事であり、ネットの情報でお客さんが一人でできるようなものでもなく、資格がないとできないので参入障壁が高いものです。
このため、あなたは特許事務所でこの代理業務の実務を積んでいけば社会的にニーズがあり、安定します。
その結果、転職も容易ですし、独立することもできます。
2.2.②サラリーマンの問題点が解消される
特許事務所では、たいていの場合、会議・出張・転勤・先輩後輩の縦の関係といったサラリーマンの問題点がほぼないので、これらにうんざりしている方にとっては快適な職場です。
2.3.③英語を活かせる
特許事務所では、弁理士・特許技術者・特許事務員のいずれであっても、英語を活かせます。
英語の4技能のうち、リーディングとライティングに強いだけでも有利です。
2.4.④自由な働き方を実現できる
特許事務所ではフレックス制度や在宅制度が充実しているところが多いので自由な働き方を実現できます。
2.5.⑤若いうちから稼ぎやすい
特許事務所では、実力主義をとるところが多く、若いうちから稼ぎやすい傾向です。
2.6.⑥特許事務所の多くが都市部に集中
ここからはデメリットです。
特許事務所のほとんどは、東京・名古屋・大阪・福岡あたりに集中しており、地方は少なめの印象です。
このため、あなたが地方出身で例えば、実家に近いところに働きたいという場合には実現は難しいかもしれません。
2.7.⑦デスクワーク中心。健康に気を使う必要がある
特許事務所ではほぼデスクワークであり、あまり健康的といえません。
また眼精疲労になったり腰痛になったりしやすく自己管理が必要です。
定期的に運動しないと健康診断でひっかかりやすいです。
2.8.⑧期限厳守の世界。辛い人には辛い。
特許事務所の業務のほとんどは期限厳守です。
期限厳守なので期限に近いときはおそくまで残業する必要があったりします。
また期限のプレッシャーもありますので覚悟が必要です。
2.9.⑨地味な仕事であり、陽の目を浴びにくい
特許事務所の業務は法律文書の作成がほとんどであり、あまり陽の目を浴びにくい仕事です。
このため、有名になりたいとかそういう気持ちがあるなら向いていないかもしれません。
2.10.⑩情弱だとブラック特許事務所に入りやすい
特許事務所には残念ながらブラックもあり、このようなところに行くと、最悪人生詰むおそれもあります。
やめとけと思うタイプは具体的には以下の記事で紹介する3つです。
2.11.特許事務所のメリットとデメリットのまとめ
以上をまとめると、職場の人間関係が重要であり、わきあいあいと職場の同僚と飲んだりしながら仕事を楽しみたいという方は向いていないかもしれません。
逆に、サラリーマン生活が苦手であり、地道にコツコツと専門的なスキルを積み上げていき、将来的には自由な働き方を実現したい方に特許事務所はおすすめです。
では以下から具体的に特許事務所をランキング形式で紹介していきます。あなたに合ったところが見つかるかもしれません。
3.特許事務所のランキング
以下では、「弁理士の数」「特許出願の件数」「商標出願の件数」に分けて特許事務所をランキングしています。
例えば、あなたが商標を担当したいと思うなら、商標出願の件数が多いことは、特許事務所を選ぶ指標の1つになるでしょう。
3.1.弁理士の数ランキング
第1位 志賀国際特許事務所(東京都)151名
第2位 創英国際特許法律事務所(東京都)111名
第3位 青山特許事務所(大阪府) 94名
第3位 青和特許法律事務所(東京都) 94名
第5位 深見特許事務所(大阪府) 91名
・・・第20位 オンダ国際特許事務所(岐阜県) 38名
参考(Wikipedia「特許事務所」2019年8月現在)
特徴は、第1位~第19位までが東京か大阪のいずれかであるところです。
唯一第20位のオンダ国際特許事務所だけが岐阜県でした。
弁理士の数が30名以上いる場合、大手の特許事務所といえるでしょう。
3.2.特許公開公報の件数ランキング
第1位 志賀国際特許事務所(東京)
第2位 酒井国際特許事務所(東京)
第3位 伊東国際特許事務所(東京)
第4位 創英国際特許法律事務所(東京)
第5位 特許業務法人 太陽国際特許事務所(東京)
参考:知財ラボ「2020年特許公開公報 事務所ランキング」
特許出願の依頼を受けて特許庁に提出すると、特許庁は出願書類を公報としてネットなどに公開します。
この公開された公報が特許公開公報に該当します。
特許公開公報が多いことは特許出願の依頼件数が多いことを裏付けています。
上記のとおり、第1位~第5位まではすべて東京が独占しています。
このことからいえることは、例えば、東京だと、仕事に困りにくい(仕事をとりやすい)ということがあげられるでしょう。
3.3.商標公開公報ランキング
第1位 特許業務法人Toreru(東京)
第2位 原田国際特許商標事務所(埼玉)
第3位 はつな知財事務所(東京)
第4位 みなとみらい特許事務所(神奈川)
第5位 霞門国際特許事務所(東京)
参考:知財ラボ「2020年商標公開公報 事務所ランキング」
特徴は、特許公開公報のランキング結果と異なっている点です。
特許公開公報でランクインしていない特許事務所が登場しています。
このように、特許と商標はすみわけがなされており、もしあなたが商標を担当したいと思うなら、このランキングは役立つでしょう。
では続いて求人の探し方についてお話しします。
4.特許事務所の求人の探し方
求人サイトの探し方はおもに3つあります。
①特許事務所のサイトを見る
②知財専門の求人サイトを見る
③特許事務所に強い転職エージェントに登録する
順番に説明します。
4.1.①特許事務所のサイトを見る
特許事務所のサイトには求人のページがありますのでそこから調べることができます。
ただし、他の特許事務所と勤務待遇を比較して検討したいという方には以下の知財専門の求人サイトがおすすめです。
4.2.②知財専門の求人サイトを見る
特許事務所の求人サイトとして代表的なのがパテントサロンがあります。
パテントサロンは毎日求人情報が更新されているので、あなたに合った特許事務所が見つかるでしょう。
ただし、特許事務所の内部情報を知ってくわしくしりたいという方は転職エージェントを利用することもおすすめです。
4.3.③特許事務所に強い転職エージェントに登録
転職エージェントを利用する場合、希望条件をエージェントに伝えて、エージェントに案件を紹介してもらいます。
もし内部情報などを含めてプロにお願いしたい場合は、無料ですので転職エージェントをおすすめします。
特許事務所に強い転職エージェントはこちらで紹介しています。
-
-
【2021年】知財・特許に強い転職エージェントを弁理士が紹介
続きを見る
もし慎重に選びたいと思ったら以下の記事もついでに読みましょう。
-
-
特許事務所の転職に失敗・後悔しないための特許事務所の選び方|未経験者向け
続きを見る
5.特許事務所のまとめ
以上、特許事務所について、どういうものなのか解説しました。
もし不安なら筆者にご相談していただいてもかまいません。
もし本内容を読んでよし特許事務所で頑張るぞ思ったらすぐに行動にうつしましょう。行動しないと何もはじまりません。