弁理士 特許の書き方

特許請求の範囲とは|役割から書き方まで弁理士が解説

投稿日:

悩んでいる人
特許請求の範囲とは何だろう・・・

役割とか書き方のコツを教えてほしいな

こうした疑問に答えます。

 

本記事の信頼性

 本記事を書いている人は、「特許事務所」「TMI総合法律事務所」にて300件以上特許明細書を書いてきており、多くの特許明細書で特許査定を取得しています。

 また旭化成知財部では、特許事務所からの明細書のチェックを行い、クライアントの立場から明細書の良しあしを判断してきました。

本記事の内容

特許請求の範囲とは!?

特許請求の範囲の役割

特許請求の範囲の書き方

 

本記事の対象読者

 これから特許を出願をしようと考えている方

 特許技術者・弁理士で経験の浅い方

 なお、特許をとることのメリットについてはこちらの記事が参考になります。

特許請求の範囲とは

 特許請求の範囲とは

特許を受けようとする発明を特定するための事項の記載

 

 特許請求の範囲はとても重要です。特許請求の範囲はクレームともいわれます。

 特許請求の範囲で特定したものが特許の権利範囲となります。

 また、特許庁審査官が特許をすべきか審査する対象がこの特許請求の範囲です。

 

 上の図のとおり、発明品という1点からアイデアを抽出して権利範囲を広げて特許請求の範囲を作成します。

 具体例として背もたれのついた椅子を発明したとします。

 右の図の通り、座部の後部に板を直立させた椅子が発明品です。

 このアイデアは、ユーザが座った時に板が背と当接することで快適に座ることができるというものです。

 そうすると、このアイデアは、椅子に背もたれを形成するということがポイントです。

 このため、特許請求の範囲は以下のように特定できます。

 

 [請求項1]

 座部材と、前記座部材に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための当接部材とを含む椅子。

 

 ややこしい表現ですが、この表現では、座部材の後部に板を形成するという、位置・形状を詳しく特定せず広い範囲で請求していることがわかると思います。

 このような感じで、発明品という1点からアイデアを抽出して権利範囲を広げて特許請求の範囲を作成します。

 

特許請求の範囲がビジネスに莫大な利益をもたらす

 f:id:mayaaaaasama:20190308225810p:plain

 背もたれの椅子を発明したとして、その発明を文章で表現すると以下のようになります。

[請求項1]

 座部材と、前記座部材に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための当接部材とを含む椅子。

 この文章に該当するもの(「特許発明」といいます。)を特許権者に無断で他者が製造したり、販売したりすると特許権の侵害となります。

 そこで、他社が特許発明を製造したり、販売したりしたい場合には特許権者に使用料を支払う必要があります。

 このように、特許権者は、特許を取得することにより、他者の参入を防止できたり、使用料等の利益を得ることができたりします。

 その元となるのがこの特許請求の範囲です。

 換言すれば、たった1頁程度の文章によって、莫大な利益を生み出したり、他社の参入を防止してビジネスを有利にすることができます。

 発明は、莫大な費用が伴う投資の下、発明者の鋭意検討の積み重ねにより生まれるものです。

 そして、そのような重みのある発明から特許をとるためには、発明はたった1文で表現されます。

 この1文が発明の本質を的確に表現できていれば、莫大な利益を得ることが可能です。

 

 一方、特許出願すると、発明の内容が公開(公知化)されますので、相当のリスクがあります。

 そしてこの1文が稚拙なもので特許を取ることができなければせっかく優れた発明をしていても単に公知化しただけであり、莫大な損失を被ってしまいます。

 この1文で莫大な利益を得るのか、莫大な損失を被るのかが決定されます。

 このような企業の発明をビジネスにつなげられるのかの鍵を握るのが弁理士の役割です。

 特許請求の範囲は、発明者でなく、経験豊富な弁理士が作成することが多いです。

 特許請求の範囲はたった1文ですが、逆に発明の本質を踏まえてそれをぎゅっと1文に凝縮するのです。

 以下では、そのような特許請求の範囲の書き方について詳しくお話ししていきます。

特許請求の範囲の書き方

特許請求の範囲の

 特許請求の範囲の基本的な書き方の手順は、上図の説明図の通りです。

ポイント

 ■①概念化、②作文、③スケッチの3つ

 ■簡潔な構成であること

 ■意味が明確であること

 特許請求の範囲では、簡潔な構成であることと、意味が明確であることが重要です。

 余計な要素が含まれると、特許を取得しても特許の権利範囲が十分でなく、権利行使を上手く進めることができません。

 このため、①概念化では、余計な要素を削ぎ落し、簡潔な構成とすることが重要です。

 また、特許請求の範囲の記載が意味不明であると、特許性を判断する審査官に不備があると指摘されますし、仮に特許を取得してもその意味するところが十分でなく、権利行使を上手く進めることができません。

 このため、②作文では、意味を明確になるように作文することが重要です。

 ここで、その意味が明確であるか確認するために、③スケッチをします。

 ②作文から③概念に相当する絵が実際に書けるかどうかを確認します。

 もしあやふやなものであれば、②作文を推敲し、また③スケッチします。

 ②作文③スケッチを繰り返して質の高い文を仕上げます。

 上記の通り、特許請求の範囲を書くための重要なことは主に2点です。

ポイント

■余計な要素を書かない⇔要素数を少なくする

■意味不明な文を書かない⇔意味が明確な文を書く

特許請求の範囲の書き方の具体例

椅子の具体例

 以下では具体例を見ていきましょう。

 従来の椅子には、上図のように使用者が座るための座部材しかなかったと仮定します。

 これに対し、発明者は、上図のように座部材の後部に板部材を起立させました。

 そうすると、発明者は、使用者がその板部材に背を当接させることにより快適に座ることができることを見出しました。

 この場合、発明品は以下のように表現することが考えられます。

[特許請求の範囲]

 座部材と、前記座部材の後部に起立させた板部材と、座部材を支持する脚部材とを備える椅子。

 この場合、「座部材」「板部材」「脚部材」の3つの要素を備えている発明に特許が与えられます。

 そして、他者は、この3つの要素を備えた椅子を製造したり、販売したり等をすることができません。

 製造したり、販売したりしたい場合には、特許権者に実施料を支払う必要があります。

①概念化

 発明品そのものを作文して特許請求の範囲とすると、その範囲はとても狭いものとなります。

 以下の図のように発明品は「点」に過ぎないものですし、その「点」から範囲を広げる必要があります。

 そこで、範囲を広げるためには発明を概念化してみます。

概念化の説明図

 イメージとしては上図のような感じとなります。

 発明品という1点に対し、概念化により範囲を広げます。

 円形内に含まれるものが特許請求の範囲となります。

 概念化のコツは、発明を構成する要素のそれぞれの役割と、発明の効果を分析をすることです。

 それぞれの役割は、まずは発明の効果を抽出した上で分析してみます。

 上図の椅子では以下のようにまとめることができます。

 発明の効果…使用者が、座部材に着座した時に、板部材に背を当接させることにより快適に座ることができる。

 このように効果を抽出すると、座部材、板部材、脚部材の役割は以下のようになります。

 座部材…使用者が着座するための部材。

 板部材…使用者の背を当接するための当接部材。

 脚部材…座部材を支持するための部材。

 このように見ていくと、板部材は、必ずしも「座部材の後部に起立させる」必要はありませんし、「板状の形状」である必要もありません。

 例えば、上図の左のように、円形上の座部材の中央に柱が形成されたような形態では、「座部材の後部に起立させ」ていませんし、「板状」の形状でもありません。

 上図の右のように、座部材の後部に二本のパイプが接続し、この二本のパイプに板部材が取り付けられた形態では、「板部材」を座部材の後部に起立されていません。

 もし、上記のような特許請求の範囲では、これらの形態は含まれないことになります。

 また、発明を分析すると、重要な要素は、「座部材」と「当接部材」です。脚部材は必ずしも必要でしょうか。

 座椅子を考慮すると必ずしも脚部材は必要ではありません。

 そうすると、脚部材は特許請求の範囲から外してよさそうです。

 このようにして概念化すると発明のイメージは以下のようなものとなります。

概念化のイメージ

 以上をまとめます。

 概念化のコツは、発明を構成する要素のそれぞれの役割と、発明の効果を分析をすること

②作文と③スケッチ

 では次に作文をしていきます。概念化では以下のようにまとめました。

 座部材…使用者が着座するための部材。

 板部材…使用者の背を当接するための部材。 

 このように見ていくと、発明品を構成する要素は、座部材と当接部材です。では、上記のまとめを元に作文してみます(②作文)。

 [特許請求の範囲]

 使用者が着座するための部材と、使用者の背を当接するための部材とを含む椅子。

 次にこの文に基づいてスケッチしてみます。

 この文から絵が描けるでしょうか。

 前半の部材については何となく書けますが、後半の部材については使用者がどのような状況において背と当接するのか、更には前半の部材と、後半の部材との関係が不明確であるため絵を描くことが難しいと思います。

 これでは意味不明な文となります。

 そこで、以上の点を踏まえて、推敲します。

 [特許請求の範囲]

 使用者が着座するための部材と、[この部材に使用者が着座した時に]使用者の背を当接するための部材とを含む椅子。

 このように推敲してスケッチすると、上記の問題点が解消されて下のような絵を描くことができると思います。

概念化のイメージ

 ここで、更に文をブラシュアップしてみます。

 「使用者が着座するための部材」は簡潔に「座部材」と表現すると、冗長な記載を回避できます。

 また、座部材と区別するために後半の部材を「当接部材」と名付けます。そうすると、以下のような表現になります。

使用者が着座するための[座]部材と、この部材[座部材]に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための[当接]部材とを含む椅子。

 このような感じで特許請求の範囲を作成します。

 作文のコツとしては、構成要素が複数ある場合、各要素の関係を明確にすることです。

 各要素の関係を明確にすれば、文の意味も理解しやすく、スケッチもしやすくなります。

 以上をまとめます。

 ・特許請求の範囲は、「作文」と「スケッチ」を繰り返しながら仕上げていく。

 ・構成要素が複数ある場合、各要素の関係を明確にする。

 

さらに、従来技術と対比させながら特許請求の範囲を書いていくことが重要です。

書き方は過去記事で解説しています。

特許のクレームの書き方を弁理士が解説【初学者向け】

続きを見る

特許請求の範囲のまとめ

以上、特許請求の範囲についてまとめました。

このブログでは、特許の書き方・取り方のコツについて順次記事を公開していきますのでぜひご覧いただければと思います!

>>特許の書き方はこちら

>>特許のとり方はこちら

もしご不明な点があればわたくし士業男子やまにご相談を受けても構いません。

yamatenisan@gmail.comまでご連絡を頂ければと思います。

また、特許出願の代行サービスもしています。詳しくはこちら。

 

弁理士やまが所長の特許事務所はこちらです。

特許・商標出願代行に加えサイト運営などのWEBコンサルのサービスも提供しています。

料金表などについてはこちらをご覧ください。

ツィッターでも発信中。フォローして頂けると嬉しいです!

Youtube始めました。チャンネル登録していただけると嬉しいです。

 

 

-弁理士, 特許の書き方

Copyright© 弁理士ブログ|とある士業の知的な日常 , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.