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構造物のクレームドラフティングのコツ|5つのことを知っておけばOKです

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 僕は、とある法律事務所で働く弁理士(ツィッター@mayaaaaasama)🙈

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構造物系のクレームがうまく書けないなあ

 こうした疑問に答えます。

 今回は実務者向けの内容ですが、これから弁理士の仕事をしてみたいという方にもわかりやすく書きましたのでぜひご覧いただければと思います。

目次

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構造物のクレームがうまくかけない理由

構造物のクレームって難しくないですか。

僕は一人前に書けるようになるまで3年かかりました。

まあ一人前といっても20年以上のベテラン弁理士に「まだまだはなたれ小僧じゃ」と言われそうですがw

今では上司からほぼノーチェックで、クライアントからも特に何も言われず案件をこなしています。

しかし、昔は本を読んだり、過去の公報を真似ても上手く書けず、上司からのやり直しの連続でした。

そこから、ベテラン所長に鍛えられなんとかかけるようになりました。

僕も最初は書けなかったので書けない理由はわかります。

理由はこんな感じです。

・上からの指導がないから

・本を読んでも敷居が高すぎる

・型を身につけていないから

まずクレームドラフティングは独学では無理です。

上司からの良質な指導を受けるようにしましょう。

もし今なんら指導がないという方は下記記事を参考に職場を変えましょう。

>>特許事務所で転職して失敗しないための転職のやり方

ちまたにはクレームドラフティングの本はいくつかあります。

例えば、王道では以下の本があげられます。


特許出願のクレーム作成マニュアル

僕もこの本を読んで勉強しました。

この本を読んでクレームが書けるようなら正直この記事読む必要なしです。

この本、超むずいです。

普通に挫折しますよ。てか僕はこれ読んで自信なくしました笑

実はクレーム作成本ってめちゃくちゃ難易度の高いものが多いのです。

しかし、実際の実務においてここまで高いレベルを要求されるものはないです。

あとこのやり方を実践していたら時間がかかりすぎますよ。

クライアントから早くしてよとかえって不評を買うおそれ大です。

これに対し、僕はこれまでの経験でクレームをうまく書くためのコツのようなものを身に着けました。

それは5つのことを知っておけばOKです。

それをこれからお話しします。

構造物のクレームをうまくかくために知っておくべき「5つ」のこと

ここでは構造物のクレームをうまくかくために知っておいた方がよいことをお話しします。

ぶっちゃけ以下の5つを知っておけばあとは経験で書けるようになりますよ。

それは以下のとおりです。

(1)「と書き」を使いこなす

(2)各部材は近いものから順番に書く

(3)構造物の構成要素は「役割」で特定する

(4)部材名に「形状」情報、「位置」情報、「役割」情報のいずれかを含める

(5)表現に困ったら先願公開広報をパクる

以下順番にお話しします。

(1)「と書き」を使いこなす

まずは、クレームは「と書き」で書けるようにしましょう。

構造物の発明は複数の構成要素で成り立ちます。

例えば、構成要素がA~Dで成り立つ場合には、

Aと、Bと、Cと、Dと、を備える〇〇。というように表現します。

このように表現することで、権利をとったときに侵害検証も容易となります。

例えば、「家」をクレームで表現してみます。

「家」は通常「床部」「柱」「天井部」「屋根部」の4つの構成要素で成り立っています。

そうすると、家をクレームした場合には以下のように表現できます。

床部と、

 前記床部に固定された複数の柱と、

 前記複数の柱により支持された天井部と、

 前記天井部の上方に形成された屋根部と、

 を備える建築物。

これが基本的な書き方です。

さらにこのような建築物が従来技術であり、屋根部に何らかの特徴がある場合には、以下のように書きます。

床部と、

 前記床部に固定された複数の柱と、

 前記複数の柱により支持された天井部と、

 前記天井部の上方に形成された屋根部と、を備え、

 前記屋根部が〇〇である、建築物。

ここでさらに床部が畳とフローリングの2つの構成要素を備えているとして、これらをクレームに含めたいとします。

その場合には、「と」書きではなく「及び」を使う方が読み手に読みやすくなるのでおすすめです。

畳及びフローリングを含む床部と、

 前記床部に固定された複数の柱と、

 前記複数の柱により支持された天井部と、

 前記天井部の上方に形成された屋根部と、を備え、

 前記屋根部が〇〇である、建築物。

これらを一般化すると、構成要素の一番大きなくくり(A、B、C、D)は「と書き」として、その各構成要素の小さな要素(a1、a2)は「及び、又は」を使うことをおすすめします。

(2)各部材は近いものから順番に書く

次に、各部材は近いものから順番に書いていきましょう。

先ほどの家のクレームでは以下のように表現しました。

床部と、

 前記床部に固定された複数の柱と、

 前記複数の柱により支持された天井部と、

 前記天井部の上方に形成された屋根部と、

 を備える建築物。

このクレームでは、「床部」「複数の柱」「天井部」「屋根部」がこの順序で特定されています。

そして、「複数の柱」は直前の「床部」を受けて説明がなされており、「天井部」は直前の「複数の柱」を受けて説明がなされており、「屋根部」は直前の「天井部」を受けて説明がなされています。

このように先に登場した構成要素を用いて、次に構成要素を説明していくのが、発明をもれなく正確に表現するためのコツです。

発明の概念をクレームでうまく表現しているかどうかを確認する方法としては、そのクレームの文章だけで「絵」が描けるかどうかというのがあります。

実際に絵を描くことができなければそのクレームは意味不明なものです。

拒絶理由で記載不備を指摘されるおそれが高いです。

しかし、このように、先に登場した構成用を用いて、次に構成要素を説明していく書き方をすれば、「絵」を描くことができますし、発明の概念をうまく表現することができます。

特に構造物の場合には、構成要素の位置関係は相互の役割というのが重要であり、これをクレームに書かないと意味不明なことが多いです。

この書き方はおすすめですので是非ためしてください。

(3)構造物の構成要素は「役割」で特定する

構造物のクレームは構成要素に分けてそれぞれを説明していきます。

そこでどのように構成要素を分けていくかのポイントは「役割」です。

構成要素の特定する上で重要なのは「役割」「位置関係」「形状」の3つです。

たいていの場合にはこの3つを意識しておけばOKです。

例えば、「家」のクレームの場合には、「床部」「柱」「天井部」「屋根部」のいずれも役割は違いますよね。

このように「役割」で分けて構成要素を抽出していくのがポイントです。

床部と、

 前記床部に固定された複数の柱と、

 前記複数の柱により支持された天井部と、

 前記天井部の上方に形成された屋根部と、

 を備える建築物。

なお、上述の「家」のクレームではそれぞれの構成要素の役割をクレームで特定していませんが、役割を書くまでもなく当たり前のことなので省略しています。

「役割」で構成要素を抽出していくというのはこれだけ読んでもイメージがわかないと思うので具体例(擁壁ブロック)のところで詳しく説明しています。

(4)部材名に「形状」情報、「位置」情報、「役割」情報のいずれかを含める

構造物の構成要素を特定するときにその構成要素(部材)の名称を上手くかくのが弁理士・特許技術者のうでの見せ所です。

ここで、部材名を特定するときのポイント(コツ)をお話しします。

それは「形状」情報、「位置」情報、「役割」情報のいずれかを含めることです。

この3つを含めてもよいですし、どれか1つでもよく2つでもよいです。

構造物の場合には各構成要素は、形状、位置(関係)、役割の3つのいずれかを特定すれば各構成要素をうまく表現できます。

これについてもこれだけでは上手くイメージがわかないと思うので具体例(擁壁ブロック)のところで詳しく説明しています。

(5)表現に困ったら先願公開広報をパクる

最後に表現に困ったら先願公開公報の表現をパクりましょう。

パクることは悪いことではないです。

むしろ積極的に活用すべきです。

ただし、単にパクっただけではだめです。その表現が正確なのか国語辞典でしっかりと確認しましょう。

ネットで調べるより国語辞典です。クライアントに裏付けするときにネットで調べたら・・・よりも国語辞典で調べたら・・・のほうが印象がよくないですか?

また、国語辞典の方が意味も正確です。おすすめは岩波です。

あとは、パクり元の拒絶理由も確認しましょう。記載不備が指摘されているようなものはパクってはだめですよ。

構造物のクレームドラフティングをしてみましょう|実践編

では実際に構造物のクレームドラフティングをしてみましょう。

題材は擁壁用のブロックです。

擁壁って知っていますか。

よく電車の窓から見えるものです。

擁壁というのは、土砂の崩壊を防ぐために土砂を支える構造物です。特に土の斜面などの不安定な斜面に設けられます。

写真で見るとあああれかと分かると思います。

擁壁の形成方法は大きく2つのステップがあります。

まずコンクリートブロック(擁壁用ブロック)を縦横方向に積み上げていきます。

次に、隣接するコンクリートブロック間に充填剤を充填させて隣接するコンクリートブロック間どうしの結合力を高めます。

このようにして上図の写真のような擁壁を形成することができます。

今回の発明はこの擁壁を構成する擁壁用ブロックに関する発明です。

上図の左のブロックが縦横方向に積み上げられ形成されたのが右の擁壁(背面から見た図)です。

ここで、このブロックの特徴は、ブロックの前面側の横幅よりも背面側の横幅のほうが小さいことです。

これにより、前面側で持ち上げて持ち運びやすいですし、ブロックを縦横方向に積み上げたときに隙間が形成されます。

その隙間に充填剤として液状のセメントを投入して硬化させれば簡単に擁壁を作り上げることができます。

上図の右の灰色で示した部分は硬化したセメントを表しています。

これが本発明のポイントです。

発明のメカニズム自体は難しいものではないですがこの構造物をどのようにクレームしましょうか。

まずは、上述した構造物をうまくかくために知っておくべきことをもう一度みてみましょう。

(1)「と書き」と「及び(並びに)/若しくは(又は)」を使いこなす

(2)構造物の構成要素は「役割」で特定する

(3)部材名に「形状」情報、「位置」情報、「役割」情報のいずれかを含める

(4)各部材は近いものから順番に書く

(5)表現に困ったら先願公開広報をパクる

そもそも発明の名称を「擁壁ブロック」としていますが、「ブロック」でいいのでしょうか。

困ったら先願公開公報を見てみましょう。

「擁壁」で検索するといろいろと出てきます。

そして確認するとブロックで問題がなさそうです。

発明者が提案してくる名称もはたしてそれって正確なのか!?疑ってみることが重要です。

困ったら先願公開公報で確認です。

 

では次に、(2)構造物の構成要素は「役割」で特定する」を見てみます。このブロックを構成要素に分けてみます。

構成要素に分けるにあたって重要なのが「役割」です。

「役割」を意識してこのブロックの構成要素を分けてみると以下のようになります。

ブロックは前面側と後部側で分けることができます。

前面側の役割は擁壁面を形成することです。

後部側は前面部を安定に積み上げることです。前面側だけだと積み上げようとしても簡単に崩れます。

くずれないように安定に積み上げるにはボックスのようなものを前面部分にくっつかえる必要があります。

このように、ブロックは前面部と後部の2つにわけることができます。

ブロック

・前面部・・・擁壁面を形成する

・後部 ・・・前面部を安定に積み上げる

では次に、より正確にこれらの部材名をつけていきましょう。

「(3)部材名に「位置」情報、「形状」情報、「役割」情報のいずれかを含める」を見ていきます。

まずは「位置」情報です。上述のとおり、「前面部」「後部」とそれぞれの部材名を特定しています。

では「前面部」「後部」という部材名で十分でしょうか。それぞれについてみていきます。

まずは「前面部」ですが、これだけだと「面」だけしかないような印象を受けます。

しかし実際は「面」を含む「板状」の部分です。

つまり前面部だけだとうまく部材を特定した表現となっていません。

そうすると、「前面部」だけでは不正確で「板状前面部」というように部材名を特定したほうがより意味が伝わります。

ここで「板状」と表現しても限定すぎるものでもありません。

そこで、「前面部」を「板状前面部」と表現を変えてみます。

役割情報(擁壁面を形成すること)については、クレーム中で説明すればよいので部材名に特定しないことにします。

次に、「後部」についてみてみます。「後部」は正確には「ブロックの後部」であって、「板状前面部」の背面に形成されたものです。

そうすると、「板状前面部」との位置関係から「後部」よりは「背部」と表現するのがよいかもしれません。

次に、この背部の形状を見てみます。背部の形状はブロック形状です。

そこで、これも「板状背面部」と同じように「ブロック状背面部」と表現します。

ただし、ここで発明自体の名称が「擁壁用ブロック」なので「ブロック」が重複して気持ち悪いなと思う人もいるかもしれません。

別の表現も考えてみます。

そこで次に役割を考えます。役割は板状前面部を安定に積み上げることです。

つまり、「背部」は板状前面部を縦横方向に積み上げるときに、板状前面部がくずれないように板状前面部を「支持」する役割です。

「支持」は「ささえること。もちこたえること」です(岩波国語辞典第7版)。

用語の意味は必ず国語辞典で確認することをおすすめします。新明解はふざけすぎの感があるので岩波の方がおすすめです。

そうすると、「背面支持部」と表現すると役割も明確に包含されていてしっくりいきそうです。

ただし、本発明のポイントは「板状前面部」と「ブロック状背面部(背面支持部)」の幅の違いが特徴なので、形状で部材を特定した「ブロック状背面部」のほうがよいかもしれません。

このような感じで部材名を考えてきます。もちろんこの名称が絶対に正しいというものではありません。

ただ、名称のつけ方はこんな感じでやっていけばほぼ外すことはないです。

もし、名称のつけ方が自分でつけられないと思ったら、技術的に関連する公報を見て表現をパクりましょう。

この場合は「擁壁」とかで検索するといろいろでてきます。

パクるときは、きちんとその表現の用語の意味を国語辞典で確認しましょう。そして、その表現は今後は使えるようにしておきましょう。

「擁壁用ブロック」

 ・板状前面部・・・擁壁面を形成する

 ・ブロック状背面部・・・板状前面部の背面に形成され、縦横方向に板状前面部を積み上げたときに板状前面部を支持する

ちなみにこのブロックでは、各部材は通常は一体形成されているので、「部材」よりも「部」とするのが適当です。

ただし、別々に形成されるものを排除すると限定的になるので、明細書中に板状前面部と背面支持部は一体的に形成されてもよく、別々に形成されていてもよいと一文そえておきましょう。

では、このあたりでクレームを書いていきます。

ここで、「(4)各部材は近いものから順番に書く」を見ていきましょう。

今回の例では2つしかないですが、「板状前面部」「背面支持部」のどちらを先に書きましょうか。

まずは「板状前面部」です。なぜなら、「板状前面部」と「背面支持部」との位置関係を表現するときに「板状前面部」を先に書いた方が表現しやすいからです。

「背面支持部」は「板状前面部」の背面に形成され・・・と表現することで位置関係を特定できます。

では、ここまでの情報をまとめると、以下のような感じとなります。

【請求項1】

擁壁面を形成する板状前面部と、

前記板状前面部の背面に形成され、前記板状前面部を縦横方向に積み上げたときに前記板状前面部を支持するブロック状背面部と、を含み、

前記ブロック状背面部の幅が前記板状前面部の幅よりも小さい、擁壁ブロック。

黄色マーカ・・・役割情報

赤色マーカ・・・形状情報

青色マーカ・・・位置(関係)情報

灰色マーカ・・・発明のポイント

ここで、自分でクレームを作った時に、そのクレームの表現で「絵」が描けるかどうかチェックします。

「役割」「形状」「位置関係」の3つがきちんと描ければ絵は描けます。

実際、このクレームでも絵はできあがってくると思います。

ただし、限定しすぎでないか確認しておきましょう。この場合形状も特定していますが、発明によっては形状を特定する必要がない場合もあります。

ここで、このクレームではいきなり「擁壁面」が登場するので、審査官には不親切かもしれません。

そこで、以下のように書き改めます。

【請求項1】

擁壁を形成するために用いられる擁壁ブロックであって、

 前記ブロックを縦横方向に積み上げた積み上げ状態において擁壁面を形成する板状前面部と、

前記板状前面部の背面に形成され、前記積み上げ状態において前記板状前面部を支持するブロック状背面部と、を含み、

前記ブロック状背面部の幅が前記板状前面部の幅よりも小さい、擁壁ブロック。

冗長ですが、このように表現しても限定的にもなりませんし、発明のイメージを審査官に伝えやすくなります。

もちろんこの表現が絶対的に正しいというものではありませんが、このようなやり方(型)をみにつけていけば、クレームドラフティングのスキルも上がってきますし、発明の概念を文章で適切に表現することができます。

最後に

以上のような感じで構造物のクレームドラフティングのコツをお話ししました。

これを読んでなるほどと思ったらすぐ実践です!

ノウハウコレクターになってはだめですよ。

なお、今回の記事は先行技術調査を踏まえてクレーム作成を度外視しているので、その点もふまえたクレームドラフティングを知りたい方は次に読む記事として以下の記事を上げておきます。

>>特許明細書の書き方のコツを現役弁理士が徹底解説します

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この記事を読んでなかなかいいクレームを書いているな。ぜひうちの発明の特許権利化もお願いしたいと1ミリでも思った方はぜひご相談いただければと思います。

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よろしくお願いします。

また、クレームドラフティングでここが困っているんだよなと思っている方がいればメールでご相談OKです。

以上

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