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プロダクトデザインの保護は著作権?それとも意匠権?|現役弁理士が答えます

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 僕は、とある法律事務所で働く弁理士(ツィッター@mayaaaaasama)🙈

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 今回は、「プロダクトデザインの保護は著作権?それとも使用権?|現役弁理士が答えます」というタイトルにてお話ししたいと思います。

 今回の記事を読めば、プロダクトデザインの適切な保護のやり方がわかります。

 この記事は、「著作権法」「意匠法」を知らない方のために分かりやすく説明していますので、誰も「5分」あれば読めるかなと思います。

目次

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プロダクトデザインと著作権

 ニーチェアってご存じですか。

折り畳み式の椅子です。下の写真を見ればあああれかとわかると思います。


ニーチェアX(ニーチェア エックス) 肘:ナチュラル シート:キャメル(倉敷帆布) 【日本製】

折り畳み式なのでスペースもとりませんし、見た目はシンプルで美しいデザインです。

このニーチェアは日本人デザイナーの新居氏が作ったことから「ニーチェア」と呼ばれているそうです。

ニーチェアは日本インテリアデザイナー協会賞も受賞しています。

ニーチェアのシンプルなデザインはまさにプロダクトデザインといえます。

こんな便利でデザインもシンプルな椅子を作ったら模倣品が増えそうです。

ではニーチェアのデザインは著作権で保護されるでしょうか。

著作権と美術

結論についてお話しする前に著作権についてお話しします。

著作権では、著作物の保護対象にプロダクトデザインを含めることを具体的に規定していません。

著作権法第2条第1項には、著作物の保護対象について以下のように規定しています。

 第2条第1項 

「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」

「プロダクトデザイン」は著作権でいう「美術」に含まれるのでしょうか。

美術には、社会通念上では「純粋美術」と「応用美術」の2つがあります。

 「純粋美術」とは、絵画や彫刻のように専ら美的鑑賞を目的として創作された作品をいいます。

 簡単に言うと、実用的な機能を備えておらず、美的鑑賞のみを目的として作られたものです。

例えば、博多人形や仏壇彫刻は「純粋美術」にあてはまります。

 博多人形、仏壇彫刻、いずれも実用品とはいえないですよね。

これらの純粋美術は著作物に含まれます。

一方で、プロダクトデザインは応用美術に相当し、応用美術とは、実用品に応用でき、美的鑑賞性を備えているものをいいます。

例えば、椅子・机・自動車・電化製品のデザインも含まれます。

ニーチェアのデザインもプロダクトデザインです。

ニーチェアのデザインは著作権で保護されたのか!?

 ではニーチェアのデザインは著作権で保護されたのでしょうか。

 結論をいうと、ニーチェアのデザインは著作物性があると否定されました(最判平3.3.28:平2(オ)706)

この最高裁判決は一昔前のものですが、このように昔はプロダクトデザインの著作物性は強く否定されていました。

なぜプロダクトデザインに著作物性が認められなかったのでしょうか。

考えられる理由として以下の2つのことが挙げられます。

・「美術」は社会通念上「純粋美術」のみあてはまる
・「プロダクトデザイン」は意匠制度で保護されるべき

 意匠法の条文には著作物には美術が含まれるとしか規定されていません。

 美術に応用美術(プロダクトデザイン)が含まれるか否か明らかではありません。

そして、識者の中には、「美術」とは純粋美術のみをいうという主張が強く、実際に当時の判例では純粋美術のみが著作物として認められていました。

また、日本には意匠制度があります。

意匠制度は美観を起こさせるプロダクトデザインを保護する制度です。

もし著作権でもプロダクトデザインが保護されるのであれば、意匠権との二重保護となり望ましくないという意見もありました。

純粋美術は著作権で、応用美術(プロダクトデザイン)は意匠権で保護されるようすみわけすべきだという意見もあり、プロダクトデザインに著作物性が認められませんでした。

では今はどうでしょうか。

プロダクトデザインとTRIPP TRAPP事件

 ところが、従来の認識を覆す判例が登場しました。

それがTRIPP TRAPP事件です。(知財高判平27.4.14:平成26年(ネ)10063)

TRIPP TRAPPとはキッズ用の椅子の製品名です。

TRIPP TRAPPとは下図のような椅子です。


ストッケ トリップトラップ ナチュラル

この事件の画期的なところは従来否定された「プロダクトデザイン」に著作物性を認めたことです。

 従来では、プロダクトデザインに著作物性があると認められるためには、実用的な機能を離れてみた場合に、美的鑑賞の対象となりうる美的創作性を備えているという要件が必要でした。

この要件は敷居が高く、なかなかプロダクトデザインに著作物性が認められませんでした。

これに対して、TRIPP TRAPP事件の判例では、このような要件をゆるくして、以下のように判断すべきとしました。

応用美術については、高い創作性の有無の判断基準を設定することは相当とはいえず、個別具体的に、作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべき

 つまり、「美的鑑賞の対象」となるかどうかを軸とする従来の判断から、「創作者の個性が発揮されている」かどうかを軸とする判断に変わりました。

 創作者の個性が発揮されているならプロダクトデザインであっても著作物性があると認めますよと判決を下したのです。

 どうでしょう。

 実用品と切り離して美的鑑賞の対象となるどうかよりも、創作者の個性が発揮しているどうかの方が判断基準ゆるくなっていませんか。

 後者の場合には実用品と切り離して考えなくてもいいのです。

 そうするとニーチェアについても創作者の個性が発揮されているといえるので著作権有と判断されたかもしれません。

 TRIPP TRAPP事件は、4年前に判決が下されたものであり、最近の判例です。

 今後は、この判決に基づいて、プロダクトデザインにも著作物性が認められていくことでしょう。

 ちなみに、プロダクトデザインに著作物性を認める動きは日本だけではありません。

 アメリカでもチアガールのユニホームのデザインに著作物性が認められる判例が最近出ています。

そうすると、世界の動きをみると、プロダクトデザインについて著作権が意匠権を凌駕しているようにも思えます。

 意匠制度っていらないのでしょうか。

 著作権があればもういいのでしょうか。

著作権のメリットとデメリット

 著作権は著作物を創作した時点で権利が発生します。

すなわち、著作権は特許や意匠とことなり、権利をとるために行政機関(著作権の場合管轄は文化庁)に手続きをしなくてもよいです。

審査も不要ですし、とてもいい制度のように思えます。

権利が自然発生することが著作権のメリットともいえます。

では著作権のデメリットはなんでしょうか。

それは著作権の権利侵害を特定することは難しいことです。

著作権侵害を特定するための要件は以下の5つあります。

・著作物であること
・著作物の存在が認められること
・依拠性が認められること
・類似性が認めらること
・著作物利用の権限をもっていないこと

このうち、意匠権になくて著作権に必要な要件が「依拠性」です。

 依拠性とは簡単にいうと侵害品が他人の著作物を参考に創作したことをいいます。

 依拠性を実証することは難しいです。

 例えば、楽曲の盗作疑惑があったとしても、著作権者が自分の楽曲をまねして創作したことを立証するのは簡単ではありません。

 相手はいやこの曲は自分が思いついたと主張するわけです。

 一方で特許や意匠については早い者勝ちの制度です。

 早く特許庁へ手続きをした方が勝つ制度です。

 特許についてこれは自分のアイデアだといっても先に出した方は権利行使できます。

 しかしながら、手続き不要の著作権には早い者勝ちの制度がありません。

 このように簡単に権利が発生しても権利侵害が難しいというのがデメリットにあげられます。

プロダクトデザインは意匠権で保護すべき!?

以上のとおり、プロダクトデザインも著作権で保護されるようになってはきていますが、やはり意匠権でしっかりと保護することがよいです。

意匠登録されれば上述のとおり、早いものが勝ちの制度ですので、自分で思いついたとか関係なしで権利行使ができます。

権利侵害の要件において著作権のように依拠性の要件は課せられません。

ただし、意匠権の保護期間は登録してから20年です。

保護期間を満了すると意匠権は消滅してしまいます。

プロダクトデザインは商標と同じようにブランド色が強く、変に変えたりすることができないのでずっと権利が存続すべきかと思いますが残念ながらそうはなっていません。

ただし、来年から意匠法の制度が大きく変わり、保護期間が出願日から25年に変わります。

出願から登録まで1年弱くらいかかることから実質4年くらい延長されたことになります。

これは世界でもトップクラスの長さです。

プロダクトデザインはブランド色も強いです。

競合にデザインをパクられると、商品が売れなくなるばかりか、商品の出所を混同してしまい自社のイメージも傷つく場合があります。

もしプロダクトデザインを保護してもらいたい場合には、著作権に甘んじず意匠制度を利用すべきかと思います。

わたくし士業男子やまは近々開業予定でして、意匠登録出願の代行サービスも行っています。

相談は無料ですのでお気軽にご連絡を頂ければと思います。

 もし意匠制度って来年大きく変わるのか。どういうふうに変わるんだろうと興味を持たれる方は次に読む記事として以下のものをおすすめします。

>>意匠法2020年大改正を現役弁理士が徹底解説します|来年は意匠が熱い!?

以上

開業予定の特許事務所です。お仕事の依頼があれば是非!

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