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化学系・材料系の特許明細書の書き方のコツを現役弁理士が徹底解説します

投稿日:

 僕は、とある法律事務所で働く弁理士(ツィッター@mayaaaaasama)🙈

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化学系の特許明細書が書けるようになるコツを知りたいな

 この悩みを解決します。

 僕は、これまでに中小と大手の特許事務所(法律事務所)と大手メーカー知財部で働いた経験があります。
 詳しくはこちらです。

・中小特許事務所(材料系、構造系、電気系合わせて特許明細書の作成件数100件程)

・中小特許事務所(2か所めの特許事務所。ベテラン所長から特許明細書の書き方を一通りマスター)

・大手化学メーカー知財部(発明者に特許明細書の書き方を指導)

・大手法律事務所(特許明細書の大量処理。2年間ほどで200件程の特許明細書を作成)

 特に化学系明細書の作成は得意です。

 大手総合化学メーカー2社を始め、複数の特定材料メーカーの案件を担当して、高分子、有機、無機といった幅広い分野の特許明細書を書いてきました。

 また、2か所目の特許事務所では、この業界では有名な所長から指導を受けて、特許明細書の書き方の基本とコツを学んできました。

 今回の記事では、その書き方とコツを出し惜しみすることなく公開していきたいと思います。

 今回の記事を読めば、化学系特許明細書の書き方のコツを理解できると思います。

 即実行性があるように記事を書いていますが、もしご不明な点があれば質問等していただいて構いません.

目次

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はじめに|書き方を学んだら即実行しよう

以下に特許明細書の書き方についてお話ししますが、注意すべきことが1つあります。

それは、この記事を読んで書き方を学んだら「即実行しよう」ということです。

「ああなるほど」と理解してそのまま終わりだと一向に力が付きません。

なるほどと思ったならば、そこを実践ですぐに生かすようにすべきです。

でないと特許明細書の書き方は一向に身につきません。

ここがわからないとか質問がありましたら、ご遠慮なく僕のメールyamatenisan@gmail.comまでご連絡いただいて構いません。

 化学系明細書の特徴とタイプ

化学系明細書って難しいのかなあ。。

どや弁
技術が理解できており、化学系明細書の基本的な書き方がわかっていれば難しくありません。

分野にもよりますが、技術理解は大学初学程度で習う化学の知識があれば十分です。

化学系の学部に入ると1~2年で有機化学、無機化学、高分子化学、分析化学など一通り学ぶと思います。

このあたりの知識が身についていれば特に技術理解は難しくないと思います。

化学系明細書のタイプは、主に物質系、組成物系、製法系の3つのタイプがあります。

・物質系  ※新規な化合物を見出したときの特許

・組成物系 ※材料の組み合わせにより新たな効果を見出した時の特許。これが一番多いです。

・製法系  ※既知の化合物について新たな製法を見出した時の特許

いずれにおいても書き方の基本的なところは変わりません。今回の記事では最も案件の多い組成物系に焦点をあてて解説していきます。

 化学系特許明細書の書き方【順序編】

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 化学系特許明細書は、上図の手順で書いていくのが基本です。

 これは前回解説した「特許明細書の書き方」の手順と同じです。

 基本的に、化学系は、構造物系、電気系同様このような書き方で作成していきます。

 特許明細書の書き方についての過去記事はコチラで詳しく書いています。

特許明細書の書き方についての過去記事はコチラ

(1)「下準備」として、発明提案書と先行技術文献を読み込みます。


(2)次に、本願発明と従来技術とを比較しながら対比表を作成します。

(3)作成した対比表を元に「クレーム」を作成します(クレームドラフティング)。

(4)作成した「クレーム」を元に「明細書」を作成します(「明細書の作成」)。

(4-1)「明細書」のうち、背景技術、課題、解決手段、効果を作成し、発明のストーリーを完成させます。
 ここまでの流れは、起承転結の文章の型の構成で書きます。

(4-2)次に「実施例」を作成します。

材料系の場合、明細書の記載順序は「実施形態」⇒「実施例」の順序ですが、作成段階では「実施例」⇒「実施形態」の順番で書いていきます。
れにより「記載漏れ」をなくすことができます。

構造系の場合、「実施例」とは「実施品」を指します。
実施品が描かれた特許図面を元に説明していきます。

(4-3)次に、実施形態を作成していきます。
 実施形態では、「実施例」「実施品」を一般化して、権利範囲を広くとれるように書いていきます。

 「明細書」では、「具体例」⇒「一般化」の順序で書くのがポイントです。

(5)次に、ブラシュアップをします(「校閲」)。
 ここでは、誤字チェックや、クレームと明細書の整合性などを確認して必要に応じて修正していきます。

(6)最後に「要約書」を補充して完成です。

 なお、「願書」は特許事務員が通常作成するものであり、「特許図面」は図面担当者が通常作成するものであるのでここでは省略します。

 これらの各工程については過去記事はコチラで詳しく書いています。

特許明細書の書き方についての過去記事はコチラ

基本的なところは、上の過去記事を見ていただけばと思います。

 今回は、各工程について、化学系明細書で留意すべきことをまとめていきます。

特許明細書の書き方【特許明細書の作成段階】

 特許明細書の下準備を仕上げた後は、実際に特許明細書を書いていきます。

 まずは特許請求の範囲(クレーム)を書いて、次に明細書を書いていきます。

 特許明細書の書き方【特許請求の範囲の作成】

化学系のクレームが上手く書けないなあ。。

 この悩みを解決します。

 化学系のクレームは構造物系のクレームと比べると比較的容易です。

 というのもパターンが決まっており、なれてくるからです。

 特に化学系のクレームを作成するにあたり、悩みの種は以下のようなものであると思います。
 ※僕も最初の頃は悩みました・・・

 ・化合物を構造式で表現する書き方

 ・パラメータの測定方法はどこまで書くべきか

 ・各成分の含有量を正確に表現する書き方

 以下順番に説明していきます。

 

化合物を上手く上位概念化して構造式で特定できないなあ。。。

 この悩みを解決します。

 ぶっちゃけて言うと、構造式の書き方に決まりはありません。

 欲しいものを漏れなく含めて、正確に表現できればOKです。

 ここで「漏れなく含める」ことがポイントです。
 漏れなく一般化したつもりが、上司の指摘されて不十分だったりすることがよくあります。

 これについては、場数を踏んで慣れるしかありませんが、「漏れなく含める」ために注意すべきポイントというのがあります。

 今回はその「漏れなく含める」ために注意すべきポイントを列挙します。

 ・置換基の有無の検討

 ・連結基の挿入の検討

 ・種類の検討

 ・重要でない部分は一括りで表現する

 ・割合(ポリマーの場合)

 ・配列順序(ポリマーの場合)

 これら6つのポイントはしっかりと意識した方がよいです。

 これだけだとイメージがわかないと思いますので以下に具体例を示します。 

 発明者は、新規なポリアルキレンを発明したとします。このポリアルキレンは、側鎖にフタルイミド基を含むことにより特定の機能を発現します。

 では、このポリアルキレンをどのように構造式として表現しましょうか。

 

 上記の文言をそのまま表すと上のようになります。
 しかし、これではとても限定的な構造式の表現です。

 そこで上記のポイントを踏まえて再検討します。

・アルキレン基の水素が置換基に置換した形態も含めてもよくないか。フタルイミド基の芳香環にも置換基を含めた形態を含めてよくないか。(置換基の有無の検討)

・フタルイミド基はアルキレン基に間接的に結合していてもよくないか。(連結基の有無の検討)

・フタルイミド基は全てのアルキレン単位に結合しなくてもよくないか。一部であってもよくないか。(種類の検討)

・アルキレン基は特に重要なポイントではないから一括りにできないか。(重要でない部分は一括り)

 これらを踏まえると構造式は以下のように置き換えられます。

 X、Y、L、Rのアルファベットを使う意味合いは特にありませんw

 まずフタルイミド環に置換基を含んでもいいように、上のように表現します。
 一般的にベンゼン環に置換基を含んでもよいことを表現する場合はこのような形になります。
 そして、文言で「Rの数は1であっても複数であってもよく、複数の場合にはRは同一であっても異なっていてもよい」というように書きます。

 次にアルキレン基とフタルイミド基の間に連結基Lを挿入します。
 こうするとLが必須であるかのように表現されているので、文言で「Lは存在しても存在していなくてもよい」というように書きます。

 次に、フタルイミド基を側鎖に含むアルキレン基と含まないアルキレン基が存在してもよいことを明確にするために、それぞれのアルキレン基をX、Yと表現しています。
 ここでいちいちーCH-CH2-と書くと面倒なので、一括りにX、Yとしています。
 そして、下付きでmとnを表現していており、これは割合を示します。
 m>0の数、nは0以上の数を表し、m+n=1とすればYは存在していなくてもよい形態も含みます。

 ここで、この構造式の表現だと、X、Yが交互に形成されているように表現されているので、配列順序についても触れます。
 具体的には、ブロック共重体の場合には、交互、ランダム、ブロックの3つしかとりようがないので、この点も文言で触れます。

 そうするとクレームでの表現は以下のようになります。

 

 前記化学式中、

 Xは、アルキレン基を表し、アルキレン基の水素原子は置換基で置換されていてもよく、

 Yは、アルキレン基を表し、アルキレン基の水素原子は置換基で置換されていてもよく、

 Lは、連結基を表し、存在しても存在していなくてもよく、

 Rは、置換基を表し、Rの数は1つであってもよく、複数であってもよく、複数の場合には、複数のRは、同一であってもよく、異なっていてもよく、

 mは0よりも大きい数を表し、nは0以上の数を表し、

 m+n=1を満たす。

 このような感じで「漏れなく」書いていきます。

 初心者の場合には漏れて書いてしまうのは仕方がありません。
 これは場数を踏んで慣れることが重要です。

 この表現でいいのかなあ。。。とか迷ったら私に質問して頂いても結構です。

パラメータの測定方法はどこまで書いたらいいのかわからないなあ。。書き過ぎると長くなるし。

 こうした悩みを解決します。

 パラメータでクレームを表現すると権利範囲が広いだけでなく、侵害立証性も簡単です。

 他社製品をもってきてそれを解析すれば一発で権利範囲に含まれているかどうかわかりますから。

 パラメータではJIS規格などの規格に沿った測定方法で規定したものだけではなく、独自の測定方法により規定したものもあります。

 こういうのは厄介でどこまで書いたらいいのかわからないことが多いです。

 結論を言うと、第3者が測定可能な範囲まで書くのが無難です。

 実際にそれを書いたとしても権利範囲が限定的になるわけではないのでリスクはありません。

 また、外国出願(特にヨーロッパ)を想定した場合に、測定方法を書いておかないと必ず記載不備が指摘されます。

 クレームの文言が長くなりますが、そこはしっかりと書くようにしましょう。

含有量の割合がうまく表現できないああ。溶媒を含めたときと含めないときでは含有量変わったりするしどう書けばわからない!

 こうした疑問を解決します。

 結論から言うと、以下のテンプレートに沿って書けばよいです。

(パターン1)組成物全体に対する割合

 ●●組成物であって、

 A、B、及びCを含み、

 ●●組成物中のAの割合が、固形分換算で●●~●●質量%であり、

 ●●組成物中のBの割合が、固形分換算で●●~●●質量%であり、

 ●●組成物中のCの割合が、固形分換算で●●~●●質量%である●●組成物。

 (パターン2)成分同士の比較

 A、B、及びCを含み、

 Aの含有量に対するBの含有量の割合が●●であり、

 Aの含有量に対するCの含有量の割合が●●である●●組成物。

 組成物中に溶媒を含むか含まないかで成分の割合というのは変わります。

 組成物に溶媒を含めないとするとややこしくなるので、組成物に溶媒を含めてもよいとしたうえで、

 割合は溶媒を除いたもので規定するのがよいです。

 上記の通り、溶媒を含むことが想定される場合には、「固形分換算で」ある断りをいれておきましょう。

 一方、成分同士の比較であれば溶媒が含んでも含まなくても関係なくなるのでパターン2で割合を規定するのもよいと思います。

 基本、含有量の表現で困ったらパターン1かパターン2のいずれかを用いればよいです。

 特許明細書の書き方【明細書の作成準備】

 では、次に明細書の作成段階について説明します。

 まずは、以下の図を見てください。

とてもシンプルな図ですがこれはとても重要な図です。

明細書は実施例に書いてあることを広げるようにして書きます。

実施例は点に過ぎません。
その点で権利をとっても範囲が狭すぎて有効ではありません。

その点を膨らませて権利範囲を広くとるのがポイントです。

逆に言うと、実施例に書いてないことは明細書に書く必要はありません。

例えば、実施例でA成分、B成分、C成分を用いており、D成分について何ら用いてもいないのに、D成分のバリエーションを細かく書く必要はありません。
書くとしても1行記載で済ませるべきです。

冗長な記載となり、まずい特許明細書となりえます。

明細書1つ1つの記載が実施例にサポートされているかどうかを対応させながら書いていきます。

そして、実施例の1点を概念化して、下位概念、中位概念、上位概念、クレームと表現していきます。

例えば、実施例に塩酸を用いた場合には、塩酸⇒強酸⇒酸といった感じで概念化します。

実施例でA成分の含有量が5質量%である場合には、5質量%⇒1~10質量%⇒0.1~20質量%といった感じで概念化していきます。

ポイント

・明細書は実施例に書いてあることだけを広げるようにして書く

・実施例に書いていないことは実施形態にも書かない

・実施例の1点を概念化して、下位概念、中位概念、上位概念、クレームと表現する

 明細書には先行技術文献と区別できる特徴を仕込んでおく

実施例を一般化したものを実施形態書けばいいのはわかったけどそれだけでいいの!?

 こうした疑問を解決します。

 化学系明細書では、実施形態では実施例を一般化したものを実施形態で記載します。

 例えば、実施例ではα成分とβ成分とγ成分とを組み合わせた組成物はXという効果に優れ、Yという用途に好適に用いられるのであれば、以下のものを記載します。

 

 α成分の上位概念化A

 A、好ましくはA’、より好ましくはA’’という感じで記載する。A、A'、A''と近づくにつれてα成分に近づいていく

 β成分の上位概念化B、γ成分の上位概念化Cも同様にする。

 A、B、Cの各含有量の記載

 組成物の実施例で検証されている物性データの記載

 用途

 このように実施形態は実施例を一般化したものを記載するのは基本です。

 そして、これに+αで弁理士として腕を見せる所は、先行技術文献と対比させて進歩性の落としどころを明細書中に仕込んでおくことです。

 例えば、先行技術文献ではA成分の含有量が好ましくは1~20質量%と書いています。

 これに対して、本発明では実施例で50質量%用いています。

 そうすると、実施形態中では、A成分の含有量の好ましいものを25質量%以上というようにして先行技術文献との差別化していきます。
 これに加えて、25質量%以上であることの好ましい理由(技術的意義)についても先行技術文献と差別化できるように書いていきます。

 そうすれば、先行技術文献が審査の過程で引用されても、A成分の含有量を25質量%以上と補正すれば十分に差別化できます。
 一方、先行技術文献を意識せず、好ましい範囲を20~70質量%というように表現しているとこの数値範囲に限定しても先行技術文献と差別化できません。

 このような感じで、予め先行技術文献を入手して、その文献と差別化できる補正オプションをいくつも仕込んでおくことが弁理士の見せ所です。

 なんだかんだで発明者が明細書の書き方を覚えたら、実施例から実施形態の一般化ということはできます。
 しかし、進歩性の考え方は分かっていないことが多いので、付加価値をつけるならここにあるわけです。

 どんな先行技術文献が引用されても補正オプションが仕込まれており、万能に対応できるものが強い特許明細書と言えます。

ポイント

先行技術文献と対比させて進歩性の落としどころを明細書中に仕込んでおくこと

どんな先行技術文献が引用されても補正オプションが仕込まれており、万能に対応できるものが強い特許明細書と言える

 実施例では不利になることは書かない

 

実施例では悪い結果がでているのもあるけど載せていいのかなあ。。

 この疑問に解決します。

 もし、その悪い結果がクレームと整合性がとれないのであれば、載せずに空欄にしておきましょう。

 基本的に実施例は、悪いデータを載せないのが基本です。

 発明者はいいデータも悪いデータもまとめて送ってきます。

 選別ができていないことが多く、発明に言われてデータを載せるとクレームとの整合性がつかず無茶苦茶なものになってしまいます。

 そこで載せてよいデータと載せなくてよいデータをしっかりと選別することが重要です。

 また、比較例は実施例が優位になるようなもののみを載せましょう。

 もし迷ったら比較例は載せなくてもよいです。
 というのも、比較例は中間処理の過程で後出しできるからです。

ポイント

 実施例で悪い結果があるものは基本的に載せない。

 実施例自体を削除したり、一部のデータを空欄にする。

 最後に|学んだら即実践

 以上の通り、化学系・材料系特許明細書の書き方のコツを説明しました。

 ここで学んだことは即実践に活かしましょう。インプットしてもアウトプットしないと意味がありません。

 学んだら即実践。これが重要です。

もし不明な点等あればご連絡ください。

以上

開業予定の特許事務所です。お仕事の依頼があれば是非!

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