特許 特許-特許明細書

特許のクレームドラフティングのコツについてお話しします【マニュアルと型を身につけましょう】

更新日:

 僕は、とある法律事務所で働く弁理士(ツィッター@mayaaaaasama)🙈

f:id:mayaaaaasama:20190622224128p:plain

 

クレームドラフティングが上手くできないな。上司も教えてくれないし。どうすればよいかわからない!

 この悩みを解決します。

 僕は、これまでに中小と大手の特許事務所(法律事務所)と大手メーカー知財部で働いた経験があります。詳しくはこちらです。

・中小特許事務所(材料系、構造系、電気系合わせて特許明細書の作成件数100件程)

・中小特許事務所(2か所めの特許事務所。ベテラン所長から特許明細書の書き方を一通りマスター)

・大手メーカー知財部(発明者に特許明細書の書き方を指導)

・大手法律事務所(特許明細書の大量処理。2年間ほどで200件程の特許明細書を作成)

 この実績を元に、今回は「クレームドラフティングのやり方のコツ」をお話ししたいと思います。

スポンサーリンク

 クレームドラフティングが上手くいかない理由

クレームドラフティングが上手くいかない理由は、いつも通りのマニュアルに沿っていないからです。

まずは〇〇をして、次に〇〇をして、その後は〇〇・・・といった具合にクレームドラフティングのマニュアルがないとうまくいきません。

またマニュアルだけでなく、クレームの型も身につけた方がよいです。

マニュアルと型を身に着けていれば、高速で上手くクレームを作成することができます。

逆に、マニュアルと型が身についていないといつまでたっても時間がかかり、おかしなクレームになったりして上手く行きません。

僕も最初の特許事務所は指導がなく、いきあたりばったりのクレームドラフティングをして、上司から何度もやり直しをさせられ、全然成長しませんでした。

しかし、2か所目の特許事務所で所長から丁寧に指導を受けてもらい、クレームドラフティングのやり方を学びました。

1年以上かけて修行した結果、今では自分の裁量でクライアントにクレーム案を送っており、ほぼ修正はありません。

僕は有機化学出身ですが、専門分野以外にも、照明装置、女性用下着、半導体製造装置、擁壁、カーテンレールなどの構造物系、無機系、高分子などの材料系と幅広くクレームを書いています。

技術的に門外漢でも、クレームのマニュアルと型を身に着けていれば余裕でクレームを作成できます。

それでは、僕が実践しているマニュアルと型について以下にお話しします。

ここまでのまとめ

クレームドラフティングが上手くいかない理由

・マニュアルに沿っていないから

・マニュアルと型を身につければどんな分野でもクレームは書ける!

 クレームドラフティングのマニュアル

クレームドラフティングは以下の5つのステップを踏みます。

1.技術理解

 ※発明に最も近い先行技術文献を読み込む

2.発明の構成要素抽出

 ※発明の構成要素を抽出する。あわせて各構成要素の効果も理解する。

3.対比表作成

 ※先行技術文献と発明の対比表を作成する

4.メインクレームの構成要素決定

 ※対比表を元に、先行技術文献から新規性がでるようにメインクレームに含める構成要素を決定する

5.ブラシュアップ

 ※メインクレームの冗長な記載を避け、簡潔に記載する。

クレームドラフティングがうまくできない方は、この5つのステップに従ってやっていけばよいです。

これはメインクレームを作成するステップですが、クレームはメインクレームが書ければ7~8割は完成です。

まずはここをしっかりと書けるようにしましょう。

慣れていけば対比表の作成は不要です。

これだけだとイメージがわかないと思いますので、以下に詳しく見ていきます。

1.技術理解

 まずは発明の背景技術をしっかりと理解します。

技術理解は、専門書を読む必要はありません。
専門書を読んで勉強していると時間がかかって非効率です。

発明に最も近い先行技術文献(特許文献)を読みこなすことをおすすめします。

発明に最も近い先行技術文献は、自分で探すと面倒なので、クライアントの発明者に依頼しておきましょう。

先行技術文献では、先行技術の背景から効果までの記載はしっかりと読んでおきましょう。

これだけでも十分に技術を理解できます。

先行技術文献で見慣れない用語が出たらそれはGoogleで調べていけばOKです。

また、先行技術文献のクレームから表現が参考になることも大いにありますので、クレームでどのように表現されているのかしっかりと見ておきましょう。

 まとめ

・発明の背景技術を知るためには、発明に最も近い先行技術文献(特許文献)を読みこなす

・特に背景技術から効果までの記載とクレームの記載を読みこなす

・見慣れない用語はGoogle検索で調べればOK

2.発明の構成要素抽出

つぎに、発明の構成要素を抽出しましょう。

 発明には必ずそれを構成する要素が2つ以上あります。
 それを抽出する作業です。

 そして各要素の役割についても理解しておきましょう。

 役割をまず知っておくことが発明の概念を知るとともに、権利範囲の広いクレームを書くことができるために重要です。

 これはとても重要です。

 僕も最初は、クレームを書くときに発明品を意識して、発明の構成要素の形状、位置関係などを細かく書いて役割を疎かにしてしまいました。

 このため、クレームを書いても漏れが良く出てきて何度も修正する羽目になってしまいました。

 もう一度言います。

 クレームを書くときはその役割で特定することが最も広く漏れがないです。

 また、発明が構造物であれば各構成要素の関係性も把握しておきましょう。

 クレームを書くときに、構成要素が他の構成要素と独立して浮いているようでは、正確に発明を表現したものといえない場合が多いです。

 以下のような感じで構成要素と各構成要素の役割を抽出していきます。

 発明

 構成要素A・・・役割

 構成要素B・・・役割

 構成要素C・・・役割

 構成要素A、B、Cの関係性

 これだけだとイメージがつかないと思いますので以下に具体例を用いてお話しします。

(背もたれ椅子の発明)

f:id:mayaaaaasama:20190713135346p:plain

 発明者は、上図のような背もたれがついた椅子を発明したとします。
 従来には、椅子に背もたれをつけるという発想はなかったとします。

 この発明では、使用者が着座したときに使用者の背と当接部材(背もたれ)を設けることで使用者が姿勢よく着座できることを特徴します。

 では、この発明の構成要素と各構成要素の役割を見てみます。

 

発明(背もたれ椅子)

 ・座部・・・・・使用者が着座するための部材

 ・背もたれ・・・使用者が背を当接するための部材

 ・脚部・・・・・座部を支持するための部材

 各構成要素の関係性

 背もたれは、使用者が座部に着座した時に背を当接する

 脚部は、座部を支持する

このような感じで発明の構成要素を抽出します。

 なお、これは構造物系の分野に限らず、材料系、電気系でも有効です。

3.対比表作成

次に、先行技術文献と発明との対比表を作成します。

先行技術文献に記載された発明についても構成要素を抽出して、発明の構成要素と重複する箇所については以下のような感じでマス目を埋めていきます。

本発明 先行技術文献X
構成要素A 〇(構成要素A)
構成要素B 〇(構成要素B)
構成要素C ×(構成要素C)

※先行技術文献の数が1つの場合の例です。

このようにして、先行技術文献X(他に、文献があればそれも含めて)マス目を埋めていきます。

以下ではよりイメージがわくように、上記の背もたれ椅子について具体的にお話しします。

 

発明(背もたれ椅子)

f:id:mayaaaaasama:20190713135346p:plain

 ・座部・・・・・使用者が着座するための部材

 ・背もたれ・・・使用者が背を当接するための部材

 ・脚部・・・・・座部を支持するための部材

 各構成要素の関係性

 背もたれは、使用者が座部に着座した時に背を当接する

 脚部は、座部を支持する

上記の背もたれ椅子に対して、以下の先行技術文献X、Yには以下のような椅子X、Yがでてきたとします。

では対比表を作成していきます。

本発明 椅子X 椅子Y
座部 〇座部 〇座部
背もたれ部

使用者が背を当接するための部材

× 〇座部よりも上部側の円柱

座部を支持するための柱

脚部 〇脚部 〇座部よりも下部側の円柱

 本発明と椅子Xとは、背もたれ部の有無で差別化できるので問題がなさそうですが、椅子Yは厄介です。

 この円柱は、使用者を背に当接させて、快適に着座させることを目的としたものではありません。

 すなわち、構成要素としては似ていますが、これらの役割は異なります。

 そうすると、本発明の構成要素である背もたれ部をその役割がより明確になるように背もたれ部の構成を限定することにより、椅子Yにおける円柱と差別化していきます。

 そうすると上の対比表は以下のようになります。

本発明 椅子X 椅子Y
座部 〇座部 〇座部
背もたれ部 × 〇座部よりも上部側の円柱
 座部の後部に形成 × ×座部の中央に形成
脚部 〇脚部 〇座部よりも下部側の円柱

 背もたれ部と座部との位置関係を特定しています。
使用者がすわる座部のスペースが十分にないと快適に座ることができません。

座部の中央部に背もたれ部が形成されていると、座部のスペースが十分でなく快適性に欠けてしまいます。

 そして、椅子Yでは座部の中央に形成されており、座部と背もたれ部の位置関係で差別化できそうです。

 このようにして、先行技術文献に記載された発明と差別化できるように対比表を作成していきます。

ここまでのまとめ

対比表作成

・発明の構成要素と先行技術文献に記載された発明の構成要素を対応づけた表を作成する

・先行技術文献に記載された発明と差別化できる構成要素を見出す

・もし見いだせない場合は、構成要素を更に特定(限定)していく

4.メインクレームの構成要素決定

3.で作成した対比表をもとに、メインクレームを仕上げていきます。

ここでは背もたれ椅子を例として説明していきます。

 

発明(背もたれ椅子)

f:id:mayaaaaasama:20190713135346p:plain

 ・座部・・・・・使用者が着座するための部材

 ・背もたれ・・・使用者が背を当接するための部材

 ・脚部・・・・・座部を支持するための部材

 各構成要素の関係性

 背もたれは、使用者が座部に着座した時に背を当接する

 脚部は、座部を支持する

対比表

本発明 椅子X 椅子Y
座部 〇座部 〇座部
背もたれ部 × 〇座部よりも上部側の円柱
 座部の後部に形成 × ×座部の中央に形成
脚部 〇脚部 〇座部よりも下部側の円柱

対比表に基づいてメインクレームを作成すると以下のようになります。

【請求項1】

使用者が着座するため座部と、

座部の後部に形成され、座部材を使用者が着座した時に使用者の背を当接するため背もたれ部と、

座部を支持する脚部と、

を含む椅子

黄色マーカ・・・役割

赤マーカ・・・構成要素名

青マーカ・・・先行技術文献と差別化できるポイント

このような感じで、クレームを作り上げることができました。

このように、発明の構成要素と、各構成要素の役割を抽出しておき、対比表を作成して、先行技術文献に対する発明のポイントを知っておけば効率よくクレームを作成することができます。

ただし、上記の記載ではまだまだ冗長な部分がありますし、余計な構成要素も含まれています。

そこで、次にブラシュアップをしていきます。

5.ブラシュアップ

クレームは簡潔な記載であることと、余計な限定が入っていないことが重要です。

難解な表現を使う必要はありません。いかに簡潔な用語を組み合わせて発明の概念を作り上げるかが腕の見せ所です。

難解な表現を使うと、クライアントが「何だこれ?」と悪い印象も受けますし、外国出願した時に英語で訳するのが難しくなります。

簡潔な記載と余計な限定がないことがポイントです。

そこで、対比表から作成した例のメインクレームをもとに、ブラシュアップをしていくことにします。

【請求項1】

使用者が着座するため座部と、

座部の後部に形成され、座部材を使用者が着座した時に使用者の背を当接するため背もたれ部と、

座部を支持する脚部と、

を含む椅子

まずは、余計な限定が入っていないかチェックします。

脚部は必要でしょうか?

脚部がなくても先行技術文献と差別化できますし、脚部は発明のポイントである快適性を達成できるために必ずしも必須ではありません。

なぜなら座椅子のようなものであっても背もたれがあれば快適性を達成できるからです。

そうすると、脚部は不要ですので脚部を削除します。

なお、この場合には、座椅子のようなもので背もたれがあるものが先行技術文献に出てくる場合もありますから、それに備えて、脚部の構成はサブクレームに設けてもよいです。

【請求項1】

使用者が着座するため座部と、

座部の後部に形成され、使用者が座部に着座した時に使用者の背を当接するため背もたれ部と、

を含む椅子

【請求項2】

座部を支持する脚部を含む請求項1記載の椅子。

[/st-mybox]

次に、冗長な記載を簡潔にしていきます。

従来技術には、椅子Xのようなものが登場しており、座部というのは使用者が着座するためのものであることは誰でも認識できます。

そうすると座部の役割までクレームに書いておくのは冗長といえます。

では、背もたれ部の「使用者が座部に着座した時に」というのは冗長でしょうか。

これは、書いておくべきです。

というのは、これを書かないと使用者がどういう状況で背を当接するのかが不明瞭であるからです。
この場合には、想定しえないものまでクレームに含まれてしまうことになります。

このようなことを回避するために、この記載は冗長に思えますが書いておくのが無難です。

そうするとブラシュアップで以下のようになります。

【請求項1】

座部と、

座部の後部に形成され、使用者が座部に着座した時に使用者の背を当接する背もたれ部と、

を含む椅子

【請求項2】

座部を支持する脚部を含む請求項1記載の椅子。

[/st-mybox]

このような感じで、クレームをブラシュアップしていきます。

重要なことは不要な構成要素の排除と冗長な記載の削除です。

 クレームの型について

以上のようなマニュアルに沿ってクレームを書けばクレームドラフティングも上達していきます。

後は経験です。場数を踏んでいけばクレームドラフティングはどんどん上達していきます。

ここで、クレームの型についても身につけておきましょう。

僕が使っている型をご紹介します。

クレームの書き方は、主に構成列挙型です。

具体的には、以下のような感じです。

Aと、

Bと、

Cと、

を含むX。

このような書き方は、Xの構成要素であるA、B、Cが箇条書きのように列挙されているので構成列挙型と呼ばれています。

ただし、構成列挙型には更に2つのタイプに分類されます。

上記の椅子の例で言うと、以下のような感じです。

タイプA

【請求項1】

座部と、

座部の後部に形成され、使用者が座部に着座した時に使用者の背と当接する背もたれ部と、

を含む椅子

タイプB

【請求項1】

座部と、背もたれ部とを含み、

背もたれ部は、座部の後部に形成され使用者が座部に着座した時に使用者の背を当接する椅子。

これらの違いは、背もたれ部の説明を前に出すか、後に出すかの違いです。

タイプBの場合には、登場人物である構成要素を最初に出して、そこから各構成要素の説明をしていきます。

これは特許事務所の指導によってマチマチかと思います。指導者の好みの問題です。

ただし、タイプAの型を身に着けておくことがおすすめです。

その理由は以下のとおりです。

・漏れがなくなる

・書きやすい

タイプAの場合には、「座部と、座部の・・・当接する背もたれ部と、・・・」というように、前に出てきた構成要素を受けて、別の構成要素が登場してきます。

このような書き方に慣れておくと、漏れがなくなるとともに、構成要素が一人だけ浮いてしまうというような問題も解消されます。

是非この型を身に着けておくことをおすすめします。

 サブクレームの作り方

 メインクレームの作り方については説明したので次からサブクレームの作り方を説明します。

 サブクレームを作る上でポイントとなるのは「2つ」しかありません。

・縦の展開(進歩性の落としどころ)

・横の展開(カテゴリーを変える)

メインクレームは確か新規性さえあればいいんだよな。

どや弁
そうです。新規性は確実、進歩性は曖昧です。少なくとも新規性があるポイントを特定して客観性を担保するのがメインクレームです。一方、進歩性についてはその判断は審査官の心証が大きく、主観性が入ります。そこで、絶対これは進歩性がある!とはいえないですし、新規性だけ主張して特許が認められるケースもあります。そこで、サブクレームについては、進歩性が認められやすいようなポイント(構成)を追加していきどこで特許性が出てくるかを見極めていきます。

 権利範囲は当然広くとっておきたいものです。そこで、メインクレームは少なくとも新規性を確保できるポイントだけを特定するにとどめます。

 ただし、それだけでは審査官が特許性を認めてくれるケースは少ないです。そしてメインクレームだけだとそこで審査は終わってしまいますので発明のどの範囲まで特許性が認められるかがわかりません。

 そこで、特許性が認められる段階まで発明のポイント(構成)を特定していきます。

 例えば、上記の椅子の例で例えるならば、

 請求項2 座部を支持する脚部を有する請求項1記載の椅子。

 請求項3 前記背もたれ部が水平面に対して〇〇~〇〇°傾斜している請求項1又は2記載の椅子。

 というようにポイントを特定していきます。

 ちなみに請求項2のように新たな構成を追加することを「外的付加」、請求項3のようにすでに特定した構成をさらに限定することを「内的付加」といいます。

 また横の展開も考えます。

 カテゴリーを物クレーム以外に、製造方法クレーム、単純方法クレームについても考えます。 

 例えば、〇〇組成物という発明があって、それが複屈折率を向上させるという機能があるとします。

 ここで、〇〇組成物についてはすでに先行技術文献に開示されており、物としては特許を取ることが難しそうです。

 この場合は権利化を断念しないといけないでしょうか。

 しかし、先行技術文献では複屈折率を向上させるという機能については書かれていません。

 そこで、例えば、「〇〇組成物を用いて複屈折率を向上させる方法」といったカテゴリーを変えることも検討してみます。

 カテゴリーは主に3つで物、製造方法、単純方法です。これらに特徴がないか検討してみることも重要です。

 最後に

以上の通り、クレームドラフティングのコツについてお話ししました。

これらを身に着け、経験を積んでいけば短期間で上達できます。

ただし、ノウハウだけ知っておいても意味がありません。覚えたことはすぐ実践しましょう。

もし不明な点があれば僕にまで相談OKです。早めに回答します。

このブログでは明細書の書き方についても書いていますのでもしよければこちらもあわせてご覧ください。

明細書の書き方はコチラ

開業予定の特許事務所です。お仕事の依頼があれば是非!

弁理士試験の勉強方法のおすすめ記事

弁理士試験の勉強方法のおすすめ記事はコチラ

弁理士試験の勉強方法のおすすめ記事

特許事務所への転職のおすすめ記事

-特許, 特許-特許明細書

Copyright© 弁理士ブログ|とある士業の知的な日常 , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.