とある士業の知的な日常

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【特許事務所への転職】特許技術者に英語力はほとんど必要ありません。その理由をお話しします。

僕は、とある法律事務所で働く士業男子🙈

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以前、技術者、エンジニアに特許技術者への転職を勧めた記事を作成しました。具体的にはこちらです。

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  ここで、特許技術者への転職を考えている方の中に、特許技術者って英語力って必要じゃないの?と思うかもしれません。

 そこで、今回は、特許技術者に必要な英語力についてお話しします。結論から言うとほとんど必要ありません。

 

目次です。

特許技術者に英語力はほとんど必要ありません。

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 特許技術者に英語力はほとんど必要ありません。よく求人応募サイトで募集条件に「英語力のある方」とありますが、実際に入ってみると英語力が必要なことはほとんどないと思います。なお、一部の特許事務所では、特許技術者に特許明細書を翻訳をさせるところもありますが、たいていは、翻訳者が担当しますので実質ないと言っても差し支えありません。

 但し、上記の通り、英語力は「ほとんど」必要ありませんと表現しており、英語力が「全く」必要ないというわけではありません。ではどういう英語力が必要なのかと言いますとそれは高校英語文法と簡単な英文を理解できる程度です。逆に高校英語文法と簡単な英文を理解できていれば、特許技術者の仕事において英語に苦しむ必要がないと思います。このため、英語が苦手な人にとっても、特許技術者という仕事を上手くやっていけると思います。

 なぜ、高校英語文法が重要であるかについては、特許技術者の具体的な仕事内容を説明する時にお話しします。

特許技術者が担当する仕事のうち、英語が関係するもの

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 特許技術者が担当する仕事のほとんどが、国内特許明細書の作成と、国内中間の応答案の作成です。これらの具体的な内容については過去記事で紹介していますのでこの記事では省略します。これらは、ほとんど英語を使うことはありません。

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  一方、特許技術者が担当する仕事のうち、英語が関係するものとしては以下のものがあります。

(1)翻訳者が作成した英文明細書のチェック

(2)外国中間のOAの検討

 以下、(1)~(2)について具体的な仕事の内容を説明するとともに、これらがほとんど英語力を必要としない理由についてお話しします。

(1)翻訳者が作成した英文明細書のチェック

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 特許技術者(弁理士も同様)は、翻訳者が作成した英文明細書をチェックすることがあります。これは、日本ですでに特許出願したものを外国へ出願する場合、日本での出願書類である、特許明細書を日本語から英語へ翻訳する必要があります。

 英文明細書のチェックというと、英文を一語一句理解した上で丁寧にチェックしないといけないから英語力(リーディング力)が必要ではないのかと思われるかもしれません。しかし、翻訳者による翻訳の精度は凄まじく、一語一句丁寧にチェックする必要はありません。特許技術者がチェックするのは下記の3点です。

(a)クレームにおける冠詞

(b)翻訳者のコメント

(c)正しい技術用語を用いているか

 (a)については、翻訳者は、クレーム(特許請求の範囲)の表現について深く理解していないことが多く、クレーム(特許請求の範囲)において、「a」と「the]の使い分けが上手くなっていないことがあります。このため、この「a」と「the]の使い分けが正しくなされているかどうかを主にチェックします。これは高校英文法を理解していれば問題なくチェックできると思います。

 (b)については、翻訳者は、日本語の特許明細書において、不明瞭な日本語がある場合、その日本語に対する英訳が正しいかどうか、コメントをつけることがあります。「…という理解でこのように英訳しましたが適切でしょうか」という感じです。コメントというのはワードの校閲タブにあるコメントです。そのため、このコメントに沿って、その英文が適切に訳されているか確認します。これは英文を理解するというよりもその不明瞭な日本語を理解する方が重要であり、高度な英語力は求められません。

 (c)についても、翻訳者は、「この技術用語をこのように訳しましたが適切でしょうか」とコメントをつけてきますのでその技術用語が正しく英訳されているかチェックします。これは適切に判断できなくてもクライアントの発明者が適切に判断しますので、発明者にボールを投げても問題ありません。

 以上のようにまとめると、[a]と「the]の冠詞、不明瞭な日本語の理解が重要なチェックポイントであり、特に高度な英語力は求められません。

(2)外国中間のOAの検討

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 特許技術者は外国中間のOA(オフィスアクション)を検討することがあります。OAとは、日本でいう拒絶理由通知です。外国においても、特許出願に係る発明について、特許審査官が特許を与えてもよいか審査をして、特許を与えることができないと判断した場合、拒絶理由通知書を通知します。これは、上図の通り、現地代理人を通じて送られてきます。特許技術者は、(a)送られてきたOAの内容を確認し、(b)これに対する有効な対応案を検討して、(c)現地代理人へ応答方針を提示します。この外国中間でのOAでの検討をまとめます。

(a)OAの内容を確認する。

(b)OAに対する有効な対応案を検討する。

(c)現代理人へ応答方針を提示する。

 まず、(a)について、OAの内容を確認します。OAはもちろん英語です(特許庁が英語圏の国の場合。中国、台湾、韓国の場合は現地代理人が日本語に翻訳してくれています)。

 ここで、OAの内容を理解するためにリーディング力が必要ですが、前述のとおり、簡単な英文を理解できる程度があれば十分に対応可能です。なぜかというと、英文の表現も簡単な表現で書かれており、英文のパターンがほぼ決まっているからです。また、現地の特許法をきちんと理解していれば特に細かく読まなくても「ああ、こういうことを指摘しているんだな…」というのが分かってくると思います。

 次に、(b)について、OAに対する有効な対応案を検討する必要があります。ここで、外国出願と言えど、内容はその前に出願した日本語の特許明細書の内容ですので、外国出願における英文明細書の内容を細かく見る必要はありません。

 但し、ここで注意すべき点があります。それは、OAで引用された引用文献が英語の文献である場合があるということです。特許を与えることができない理由に「新規性欠如」「進歩性欠如」の拒絶理由というものがあります。「新規性欠如」というのは、特許出願に係る発明が、すでに公知となっている技術と同一のもので場合の拒絶理由です。一方、「進歩性欠如」というのは、特許出願に係る発明が、すでに公知となっている技術と似たような技術であり、その発明に属する分野における技術者であれば容易にその発明をなしとげるようなものである場合に通知される拒絶理由です。この場合、審査官はその同一の技術又は似たような技術であることを示すために公知文献を引用することがあります。そして、この公知文献が現地で公開された文献であることがあります。

 しかし、このような公知文献のほとんどは、対応する日本語の文献があります。というのは、これらの公知文献もまた特許出願に係る明細書であり、出願人が日本企業であることが多く、先に日本出願したものを外国出願したものであるからです。あるいは出願人が外国企業であっても、その出願人は日本にも出願していることが多く、この場合においても日本語の文献があります。そこで、上手く検索して日本語の文献を入手すれば英語の文献を読む必要はありません。

 次に、(c)について、応答方針が決まると、その応答方針を英語で現地代理人へ指示する必要があります。このため、ライティング力が必要になるかと思いますが、日本語がしっかりとできていれば特段ライティング力は必要ありません。というのは、英文の作成は、ほぼGoogle翻訳などの翻訳ツールで対応可能であるからです。この場合、Google翻訳の翻訳結果が文法的に適切かどうかを判断しないといけないため、高校英文法を理解できる程度は必要です。

 以上、説明した通り、外国中間のOAの検討においても、高校英語文法と簡単な英文を理解できる程度の能力があればそれほど英語力は必要ありません。

ただし、英語力があったほうが好ましい

 以上の通り、特許技術者に英語力はほとんど必要ありません。実際、僕の周りでも英語が苦手な方が多いです。高校英語文法の理解も十分でない方も多いですが、上手くやっていけています。これは、いいかえると英語力があったほうがアドバンテージがあるということになります。英語力があれば、一層、外国中間のOAの案件も速くこなせますので仕事をまわしてもらい、売上を上げて給料を稼ぐこともできます。このため、特許技術者に英語力は必要ありませんが、英語力があればアドバンテージがあります。

最後に|特許事務所への転職

 このブログでは、特許事務所への転職の記事を書いていますので、転職に興味があればぜひご覧いただければと思います。

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ご質問などあれば

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 最後になりましたが、特許事務所の転職などについて筆者に聞きたいことがあればご遠慮なくご連絡を頂ければと思います。答えられる範囲のことは答えます。

 メールアドレスはyamatenisan@gmail.comです。ツィッターのDMでも構いません。

以上