弁理士 特許

特許の書き方のコツを300件以上書いてきた現役弁理士が教えます

更新日:

悩んでいる人
特許の書き方がわからないな。特許請求の範囲とか明細書とか何を書いたらいいのかよくわからない・・・コツとかも教えてほしいな。

士業男子やま
今回はこうした疑問に答えます!

記事を書いているわたくし士業男子やまは、弁理士をしており、これまでに特許明細書を300件以上は書いており、特許をとってきています。

分野は、材料系を軸として機械・電気と幅広いです。

今回は以下のような方を読者に想定して書いています。

〇特許出願をしようと考えているけど、特許の書き方がわからない発明者

〇弁理士の仕事をしているが、特許の書き方がわからない未経験者・経験の浅い方

この記事を読めば、「特許請求の範囲」「特許明細書」の書き方のコツがわかります。

目次

特許で書くべき書類は5つある

 まずは、特許をとるために必要な書類についてお話しします。

 書類は5つあります。図面は必ずしも必要ではありません。

〇願書     ➤発明者・出願人の情報を記載します。

〇特許請求の範囲➤特許をとりたい範囲を特定します。

〇明細書    ➤発明の具体的な内容を記載します。

〇図面     ➤発明の構造・動作の説明に用います。

〇要約書    ➤発明の内容を簡単に要約します。

 これらの5つの書類を1つにまとめて特許庁に出願します。

 特許庁への出願は、郵送かオンラインのいずれかがあります。

 書類のひな形は、特許庁のサイトから入手できます。

 「ひな型[2020.01]をダウンロード」して、フォルダから「出願」>>「特許」>>「P1-特許願」>>「1101_特許願(電子現金納付).htm」から開けることができます。

願書の書き方

 願書では、「発明者の名前と住所」「出願人の名前と住所」を記載します。

 なお、必ずしも発明者と出願人は一致しないことがあります。(例えば、出願人が企業で、発明者が企業内の発明者など)

 願書の書き方は難しくないかもですが、間違えて出すと補正指令がくるので注意しましょう。

図面

 図面は必須ではないですが、発明を図面を用いて説明したい場合にのせます。

要約

 要約は特許請求の範囲のコピペでOKです。

特許請求の範囲の書き方

 特許請求の範囲はとても重要です。特許請求の範囲はクレームともいわれます。

 特許請求の範囲で特定したものが特許の権利範囲となります。

 また、特許庁審査官が特許をすべきか審査する対象がこの特許請求の範囲です。

 まとめると、特許請求の範囲の役割は以下の2点です。

 ・権利範囲となるもの

 ・審査の対象となるもの

特許請求の範囲はアイデアを抽出したもの

 上の図のとおり、発明品という1点からアイデアを抽出して権利範囲を広げて特許請求の範囲を作成します。

 具体的には、例えば、図の右のとおり、座部の後部に板を直立させた椅子を発明したとします。

 このアイデアは、ユーザが座った時に板が背と当接することで快適に座ることができるというものです。

 そうすると、このアイデアは、椅子に背もたれを形成するということがポイントです。

 そうすると、特許請求の範囲は以下のように特定できます。

参考

 [請求項1]

 座部材と、座部材に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための当接部材とを含む椅子。

 ややこしい表現ですが、この表現では、座部材の後部に板を形成するという、位置・形状を詳しく特定せず広い範囲で請求していることがわかると思います。

 このような感じで、発明品という1点からアイデアを抽出して権利範囲を広げて特許請求の範囲を作成します。

特許請求の範囲がビジネスに莫大な利益をもたらす

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 背もたれの椅子を発明したとして、その発明を文章で表現すると以下のようになります。

参考

 [請求項1]

 座部材と、座部材に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための当接部材とを含む椅子。

 この文章に該当するもの(「特許発明」といいます。)を特許権者に無断で他者が製造したり、販売したりすると特許権の侵害となります。

 そこで、他社が特許発明を製造したり、販売したりしたい場合には特許権者に使用料を支払う必要があります。

 このように、特許権者は、特許を取得することにより、他者の参入を防止できたり、使用料等の利益を得ることができたりします。

 その元となるのがこの特許請求の範囲です。

 換言すれば、たった1頁程度の文章によって、莫大な利益を生み出したり、他社の参入を防止してビジネスを有利にすることができます。

 発明は、莫大な費用が伴う投資の下、発明者の鋭意検討の積み重ねにより生まれるものです。

 そして、そのような重みのある発明から特許をとるためには、発明はたった1文で表現されます。

 この1文が発明の本質を的確に表現できていれば、莫大な利益を得ることが可能です。

 一方、特許出願すると、発明の内容が公開(公知化)されますので、相当のリスクがあります。

 そしてこの1文が稚拙なもので特許を取ることができなければせっかく優れた発明をしていても単に公知化しただけであり、莫大な損失を被ってしまいます。

 この1文で莫大な利益を得るのか、莫大な損失を被るのかが決定されます。

 このような企業の発明をビジネスにつなげられるのかの鍵を握るのが弁理士の役割です。

 特許請求の範囲は、発明者でなく、経験豊富な弁理士が作成することが多いです。

 特許請求の範囲はたった1文ですが、逆に発明の本質を踏まえてそれをぎゅっと1文に凝縮するのです。

 以下では、そのような特許請求の範囲の書き方について詳しくお話ししていきます。

特許請求の範囲の書き方のコツ

特許請求の範囲の

 特許請求の範囲の基本的な書き方の手順は、上図の説明図の通りです。

ポイント

 ■①概念化、②作文、③スケッチの3つ

 ■簡潔な構成であること

 ■意味が明確であること

 特許請求の範囲では、簡潔な構成であることと、意味が明確であることが重要です。

 余計な要素が含まれると、特許を取得しても特許の権利範囲が十分でなく、権利行使を上手く進めることができません。

 このため、①概念化では、余計な要素を削ぎ落し、簡潔な構成とすることが重要です。

 また、特許請求の範囲の記載が意味不明であると、特許性を判断する審査官に不備があると指摘されますし、仮に特許を取得してもその意味するところが十分でなく、権利行使を上手く進めることができません。

 このため、②作文では、意味を明確になるように作文することが重要です。

 ここで、その意味が明確であるか確認するために、③スケッチをします。

 ②作文から③概念に相当する絵が実際に書けるかどうかを確認します。

 もしあやふやなものであれば、②作文を推敲し、また③スケッチします。

 ②作文③スケッチを繰り返して質の高い文を仕上げます。

 上記の通り、特許請求の範囲を書くための重要なことは主に2点です。

ポイント

■余計な要素を書かない⇔要素数を少なくする

■意味不明な文を書かない⇔意味が明確な文を書く

特許請求の範囲の書き方の具体例

椅子の具体例

 以下では具体例を見ていきましょう。

 従来の椅子には、上図のように使用者が座るための座部材しかなかったと仮定します。

 これに対し、発明者は、上図のように座部材の後部に板部材を起立させました。

 そうすると、発明者は、使用者がその板部材に背を当接させることにより快適に座ることができることを見出しました。

 この場合、発明品は以下のように表現することが考えられます。

[特許請求の範囲]

 座部材と、座部材の後部に起立させた板部材と、座部材を支持する脚部材とを備える椅子。

 この場合、「座部材」「板部材」「脚部材」の3つの要素を備えている発明に特許が与えられます。

 そして、他者は、この3つの要素を備えた椅子を製造したり、販売したり等をすることができません。

 製造したり、販売したりしたい場合には、特許権者に実施料を支払う必要があります。

特許請求の範囲の書き方のポイント①概念化

 発明品そのものを作文して特許請求の範囲とすると、その範囲はとても狭いものとなります。

 以下の図のように発明品は「点」に過ぎないものですし、その「点」から範囲を広げる必要があります。

 そこで、範囲を広げるためには発明を概念化してみます。

概念化の説明図

 イメージとしては上図のような感じとなります。

 発明品という1点に対し、概念化により範囲を広げます。

 円形内に含まれるものが特許請求の範囲となります。

 概念化のコツは、発明を構成する要素のそれぞれの役割と、発明の効果を分析をすることです。

 それぞれの役割は、まずは発明の効果を抽出した上で分析してみます。

 上図の椅子では以下のようにまとめることができます。

 発明の効果…使用者が、座部材に着座した時に、板部材に背を当接させることにより快適に座ることができる。

 このように効果を抽出すると、座部材、板部材、脚部材の役割は以下のようになります。

 座部材…使用者が着座するための部材。

 板部材…使用者の背を当接するための当接部材。

 脚部材…座部材を支持するための部材。

 このように見ていくと、板部材は、必ずしも「座部材の後部に起立させる」必要はありませんし、「板状の形状」である必要もありません。

 例えば、上図の左のように、円形上の座部材の中央に柱が形成されたような形態では、「座部材の後部に起立させ」ていませんし、「板状」の形状でもありません。

 上図の右のように、座部材の後部に二本のパイプが接続し、この二本のパイプに板部材が取り付けられた形態では、「板部材」を座部材の後部に起立されていません。

 もし、上記のような特許請求の範囲では、これらの形態は含まれないことになります。

 また、発明を分析すると、重要な要素は、「座部材」と「当接部材」です。脚部材は必ずしも必要でしょうか。

 座椅子を考慮すると必ずしも脚部材は必要ではありません。

 そうすると、脚部材は特許請求の範囲から外してよさそうです。

 このようにして概念化すると発明のイメージは以下のようなものとなります。

概念化のイメージ

 以上をまとめます。

 概念化のコツは、発明を構成する要素のそれぞれの役割と、発明の効果を分析をすること

特許請求の範囲の書き方のポイント②作文と③スケッチ

 では次に作文をしていきます。概念化では以下のようにまとめました。

 座部材…使用者が着座するための部材。

 板部材…使用者の背を当接するための部材。 

 このように見ていくと、発明品を構成する要素は、座部材と当接部材です。では、上記のまとめを元に作文してみます(②作文)。

 [特許請求の範囲]

 使用者が着座するための部材と、使用者の背を当接するための部材とを含む椅子。

 次にこの文に基づいてスケッチしてみます。

 この文から絵が描けるでしょうか。

 前半の部材については何となく書けますが、後半の部材については使用者がどのような状況において背と当接するのか、更には前半の部材と、後半の部材との関係が不明確であるため絵を描くことが難しいと思います。

 これでは意味不明な文となります。

 そこで、以上の点を踏まえて、推敲します。

 [特許請求の範囲]

 使用者が着座するための部材と、[この部材に使用者が着座した時に]使用者の背を当接するための部材とを含む椅子。

 このように推敲してスケッチすると、上記の問題点が解消されて下のような絵を描くことができると思います。

概念化のイメージ

 ここで、更に文をブラシュアップしてみます。

 「使用者が着座するための部材」は簡潔に「座部材」と表現すると、冗長な記載を回避できます。

 また、座部材と区別するために後半の部材を「当接部材」と名付けます。そうすると、以下のような表現になります。

使用者が着座するための[座]部材と、この部材[座部材]に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための[当接]部材とを含む椅子。

[特許請求の範囲]

 このような感じで特許請求の範囲を作成します。

 作文のコツとしては、構成要素が複数ある場合、各要素の関係を明確にすることです。

 各要素の関係を明確にすれば、文の意味も理解しやすく、スケッチもしやすくなります。

 以上をまとめます。

 ・特許請求の範囲は、「作文」と「スケッチ」を繰り返しながら仕上げていく。

 ・構成要素が複数ある場合、各要素の関係を明確にする。

[応用]従来技術と区別する特許請求の範囲の書き方

 以上の通り、特許請求の範囲の書き方を説明しました。

 特許請求の範囲を書くための重要なことは主に2点です。

 ・余計な要素を書かない⇔要素数を少なくする

 ・意味不明な文を書かない⇔意味が明確な文を書く

 この2点が重要ですが、従来技術を意識して、従来技術が特許請求の範囲から外れるように書くことも重要です。

 しかし、発明者は、特許を出願する時に、従来技術を全て把握することはできません。

 審査の過程で思わぬ従来技術を引用されて特許性が否定されることもあります。

 そこで、この項では、想定される従来技術を意識した特許請求の範囲の書き方を説明します。

 上記の通り、特許請求の範囲は以下のように表現しました。

[特許請求の範囲]

 座部材と、座部材に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための[当接]部材とを含む椅子。

 ここで、特許請求の範囲は必ずしも1つで構成されているとは限りません。

 特許請求の範囲には2つ以上で構成されていても構いません。

 この構成する要素を「請求項」といいます。

 実際には、

[特許請求の範囲]

 [請求項1]

 座部材と、座部材に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための当接部材とを含む椅子。

特許請求の範囲の説明図

上図のように、請求項2以降は、請求項1の範囲を狭めるような記載をします。

 なぜこのような記載をするかというと、想定される従来技術を外せるようにするためです。

 例えば、上図のように白丸(〇)で示すものが従来技術として存在している場合、請求項1では特許性が認められません。

 しかし、請求項2では、白丸(〇)を含まないため、特許性が認められる場合があります。

 このように、従来技術を想定して、請求項の数を複数設けて、審査の過程で引用される従来技術を外せるようにしておきます。

 具体的に椅子の例で見てみます。

 例えば、請求項2と、請求項3を以下のような構成で記載してみます。

 [請求項2]

 当接部材が座部材の後部に配置されている請求項1記載の椅子。

 [請求項3]

 座部材を支持するための脚部材を含む請求項1又は2記載の椅子。

 請求項2では、請求項1で登場してきた要素である「当接部材」の内容を更に詳しく特定するものであり、このような記載を「内的付加」といいます。

 一方、請求項3では、請求項1で登場しない新たな要素「脚部材」を更に追加したものであり、このような記載を「外的付加」といいます。

 また、請求項2、請求項3はそれぞれ請求項1の内容のつけたしであることから、「…請求項…記載の椅子。」というような表現をします。

 もし、従来技術として、円形上の座部材の中央に柱が形成されたような形態が存在していたとします。

 この場合、請求項1にこの形態も含まれるため、請求項1では特許性が認められません。

椅子の従来技術

 しかし、請求項2ではどうでしょうか。

 「当接部材が座部材の後部に配置されている」と特定することにより、上記の形態は外れます。

 下図の通り、上記の形態を白丸(〇)とすると、請求項2では外すことができます。

このように特許請求の範囲は複数の請求項で構成します。

 そして、2つ目以降の請求項では、想定される従来技術を外せるように、請求項1の構成を付け足していきます。

 なるべく請求項数は多ければ多いほどよいです。

 以上を踏まえて、椅子の特許請求の範囲をまとめると以下のようになります。

[特許請求の範囲]

 [請求項1]

 座部材と、座部材に使用者が着座した時に使用者の背を当接するための当接部材とを含む椅子。

 [請求項2]

 当接部材が座部材の後部に配置されている請求項1記載の椅子。

 [請求項3]

 座部材を支持するための脚部材を含む請求項1又は2記載の椅子。

明細書の書き方

 明細書は発明の具体的な内容を説明してきます。

 特許請求の範囲では、発明を1文で表現していましたが、これだけでは発明が伝わりません。明細書は、特許請求の範囲をサポートする役割をもっています。

明細書は複数のパーツで構成されている

 上の図のとおり、明細書は複数のパーツで構成されています。

 以下それぞれを簡単に説明していきます。

【発明の名称】と【技術分野】

 【発明の名称】と【技術分野】については詳しく書かなくてOKです。

 例えば、特許請求の範囲が「背もたれを備えた椅子」であれば、【発明の名称】は単に「椅子」として、【技術分野】は「本発明は椅子に関するものである。」とすればOKです。

 この記載を詳しく書く人もいますが書き過ぎる意味がなく、単純でOKです。

 【背景技術】【解決しようとする課題】【課題を解決するための手段】【発明の効果】

 【背景技術】~【発明の効果】までの記載はストーリー仕立てで書きます。

 起承転結のイメージです。

 例えば、背もたれを備えた椅子を例に簡単に説明します。

 【背景技術】・・・・・・・・・従来、人が座るための丸太椅子があった。

 【解決しようとする課題】・・・しかし、丸太椅子は姿勢を維持することが難しく快適とはいえなかった。

 【課題を解決するための手段】・椅子に背もたれを取り付けた。

 【発明の効果】・・・・・・・・人は背を背もたれに当接させることで姿勢を維持でき快適に座ることができる。

 発明はそのアイデアが斬新であり、かつ有用であるものについて特許をうけることができます。

 そこで、特許明細書では、アイデアが斬新なものであり、かつ有用であることを審査官に伝えないといけません。

 【背景技術】~【発明の効果】までの記載では、このようにストーリー仕立ての内容とすることで従来のアイデアと比較して斬新ですよ、有用ですよと伝えます。

 【背景技術】~【発明の効果】までの記載は特許をとるためにとても重要なパーツです。

【図面の簡単な説明】

 特許明細書では図面は必須でないですが、図面をのせる場合は、その図面を簡単に説明します。

 例えば、下記の背もたれ椅子を図面にのせる場合には【図面の簡単な説明】において「図1は本実施形態の椅子の一例を示す斜視図である。」などと記載します。

【図1】

 この説明も単純なものでOKです。

 【発明を実施するための形態】【実施例】

 発明を実施するための形態は、実施形態ともいわれています。

 明細書には2つのことを書きます。

 発明品そのものと発明品を具体化したアイデアです。

 発明品そのものは実施例に書き、アイデアは実施形態に書きます。

 つまり、具体的なもの(発明品。実施例)と、一般化したもの(アイデア。実施形態)の2つです。

 ただし、ちょっとややこしいのですが、機械系の発明の場合には実施例そのものをもうけず、実施形態に発明品も書いていきます。

 実施形態では、特許請求の範囲の記載内容と対応しながら書いていきます。

 このように特許請求の範囲の内容を明細書でしっかりとサポートしていないと記載不備を指摘されて特許がとれない場合があります。

 【産業上利用可能性】

 産業上利用可能性の記載は省略OKです。

 具体的にはその発明が何の用途に使えるかということを書いていきます。

 【符号の説明】

 符号の説明は図面につけた符号の説明です。

明細書の書き方のコツ

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 明細書のおおまかな説明のあとは実際に書き方のコツについてお話ししていきます。

 明細書は、上図の手順で書いていきます。

ポイント

(1)発明提案書と先行技術文献を読みこみます。

(2)本願発明と従来技術とを比較しながら対比表を作成します。

(3)作成した対比表をもとに「特許請求の範囲(クレーム)」を作成します。

(4)作成した「クレーム」をもとに「明細書」を作成します。

 (4-1)「明細書」のうち、背景技術、課題、解決手段、効果を作成し、発明のストーリーを完成させます。

 (4-2)「実施例」を作成します。

 (4-3)「実施形態」を作成していきます。
※実施形態では、「実施例」を一般化して、権利範囲を広くとれるように書いていきます。

(5)ブラシュアップをします(「校閲」)。

(6)「要約書」を補充して完成です。

 以下にそれぞれの工程を詳しくお話しします。

明細書の書き方【下準備段階】

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 下準備では、「発明提案書」と「先行技術文献」を読み込むことと、対比表の作成を行います。

 以下順番に説明します。

 特許明細書を書く前に、「発明提案書」と「先行技術文献」を読み込みましょう。

 先行技術文献は、発明者に準備してもらうのが基本です。

 先行技術文献を読み込んでおくメリットは以下のとおりです。

1.当該分野の技術内容を理解できる

2.従来技術に対する発明のポイントを理解できる

3.先行技術文献の内容を明細書に転用できる

 先行技術文献を読むことは、当該分野の技術を知るうえでとても有益です。

 弁理士・特許技術者は、自分の専門分野以外の分野についても明細書を書かなければいけません。

 このとき、専門書をいちいち用意して読んでいれば時間がかかって非効率です。

 では、どうやって自分の専門外の技術を理解するか。

 それは、最もその発明に近い先行技術文献を読んで理解することです。

悩んでいる人
技術を理解するために専門書を読み込む必要はないの!?

士業男子やま
専門書は手元にあったほうがよいですが、特に必要というわけではないです。ネットや特許公報でほとんど調べればわかりますよ。

 「発明提案書」を読めば「発明のポイント」を理解できます。

 しかし、そのポイントは、従来技術のものである場合もあります。

 従来技術のものをポイントとしてクレームを書いても特許性は出ません。

 従来技術と差別化できる発明のポイントを知ることが重要です。

 「メインクレーム」は、少なくとも新規性が出る特徴を特定する必要がありますので先行技術文献の読み込みは重要です。

 

 明細書は、先行技術文献を意識して作りますのできちんと読みこなせば明細書の内容が充実します。

 明細書では、先行技術文献の技術的思想と異なるようにストーリーを構築させます。

 そうしないと進歩性がなく特許性が出ないためです。

 

「発明提案書」と「先行技術文献」を読み込みながら「対比表」を作成します。

 対比表は、発明と先行技術を整理して理解する上でとても重要です。

「対比表」の書き方を説明します。

ポイント

 1.「発明」の構成を要素ごとに分解します。

 2.各構成要素の役割を見出します。

 3.先行技術の公知品の構成を要素ごとに分解していき、各構成要素の役割も見出します。

 4.発明の各構成要素が、先行技術の公知品の構成にあるかどうかをチェックします。

 ここまでが対比表の作成です。

 対比表を作成したら、そこから、先行技術に対する発明の差異点を見出してクレームを作成します。

これだけでは頭の中でイメージがつかないと思うので以下の椅子を具体例として見ていきましょう。

 この例では、椅子として丸太椅子や、座部の中央に円柱が貫通した椅子は公知品であり、座部の後部に板部材が起立したような椅子(左図)を発明したとします。

 では、この例にもとづいて対比表を作成していきましょう。

ポイント

 1.「発明」の構成を要素ごとに分解します。

 2.各構成要素の役割を見出します。

 3.先行技術の公知品の構成を要素ごとに分解していき、各構成要素の役割も見出します。

 4.発明の各構成要素が、先行技術の公知品の構成にあるかどうかをチェックします。

 

 では、まず「1.」と「2.」を以下に説明していきます。

 役割については、弁理士・特許技術者が理解できないところも多いので発明者とヒアリングをして引き出します。

 ではつぎに役割から要素を概念化していきます。

 この発明では、板部材を座部材に後部に形成することにより、板部材が使用者の背を安定に支持してくれるので、使用者が着座した時に姿勢を維持できることが特徴です。

 では次に公知品についても同様にしていきます。

(公知品1:丸太椅子)

(公知品2:座部を支持する円柱が形成された椅子)

 ここまでが手順「3」です。

 では発明品と公知品のそれぞれについて、構成要素と役割を抽出したので対比表を作成していきます。

発明品公知品1公知品2
 板部材××
  座部材の後部に起立 ××
  使用者の姿勢を維持するための部材 ××
 座部材〇座部材〇座部材
  使用者が着座するための部材  〇使用者が着座するための部材 〇使用者が着座するための部材
 脚部材×〇脚部材
  座部材を支持するための部材×  座部材を支持するための部材

 こうしてみると、「板部材」は公知品1にも公知品2にもない特徴であることが分かります。

 そうすると、発明品は、「板部材」を形成することにより、公知品1と公知品2に対して新規性を備えていることになります。

 また、板部材の役割は、使用者の姿勢を維持することであり、このような発想は、公知品1と公知品2からは想定されません。

 そうすると、本発明は板部材を備えることにより、公知品1と公知品2に対して新規性も進歩性も否定されないと考えられますので、この構成をクレームで特定すれば特許性がでてきます。

 このように、対比表を作成して公知品に対して新規性がありそうな構成要素を見出すために対比表を作成していきます。

 

 ここで、板部材に対して公知品1と公知品2に対して新規性があることが分かりました。

 つづいて、構成要素を概念化できないか検討していきます。

 本発明のポイントは、使用者の姿勢を維持するための部材を形成することにあります。

 これに対し、実施品では、

 ・板状部材

 ・座部の後部に形成されている

 という特徴を備えています。

 使用者の姿勢を維持するために、これらの特徴は必ずしも必要でしょうか?

 使用者の姿勢を維持するための部材としては、上図のような椅子も想定されます。

 もし特許請求の範囲に「座部の後部に板部材が起立した」ことを特定すると、これらの椅子は権利範囲に含まれません。

 発明品だけがカバーされてしまい、アイデアそのものがカバーされていない不味いクレームとなってしまいます。

 このようなことがならないように発明品の構成要素を概念化できないか考えることが重要です。

 概念化を考える上でヒントになるのが、構成要素の役割です。

 板部材の役割が、「使用者の姿勢を維持するための部材」であるなら、この役割そのものをクレームで特定すればよいのです。

 ただし、この表現ではあまりにも機能的すぎて許容されない場合もあります。

 では、使用者の姿勢を維持するためにはどういう構成があればよいのかを考えてみます。

 それは、使用時(着座時)に使用者の背と当接するような部材が形成されていればよいのです。

 上図の例で言うと、そのような部材はシーツであり、棒状部材であるわけです。

 これらをひとまとめにして「使用者の背と当接する当接部材」と表現すれば発明品だけでなくアイデアも保護される表現となりえます。

 

 このようにして、作成した対比表から先行文献と差別化できる発明の特徴を抽出してクレームを作成していくことがポイントです。

ポイント

・対比表を作成して従来技術と差別化できる構成要素を抽出する。

・構成要素と役割を抽出し、発明の構成要素を概念化できないか検討する。

明細書の書き方【特許明細書の作成段階】

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 特許明細書の下準備を仕上げた後は、実際に特許明細書を書いていきます。

 まずは特許請求の範囲(クレーム)を書いて、次に明細書を書いていきます。

 作成した対比表を元に特許請求の範囲(クレーム)を書いていきます。

・メインクレーム

  ・新規性のある特徴は特定する

  ・余計な構成要素は特定しない

・サブクレーム

  ・進歩性の落としどころとなる特徴を特定する

 まず、メインクレームは新規性のある特徴は特定しましょう。

 なぜかというと、明細書のストーリーは、メインクレームによるところが多く、新規性のないままクレームを作ると、ストーリーがぐちゃぐちゃとなり特許性が弱い明細書となります。

 予め先行技術調査をして、新規性のある特徴を見出します。

 その特徴をふまえて、課題と効果を設定して明細書のストーリーを立てていくのが特許性が出しやすい明細書です。

 先行技術調査をしないまま明細書を書くところがありますが、それでは中間処理の過程で困ることが多いので予め先行技術調査をして新規性は出せるようにしましょう。

ここで、権利範囲を広くするために余計な構成要素は書き過ぎないようにしましょう。

 例えば、上記の椅子の例で言うと以下のようなクレームとなります。

【請求項1】

 座部材と、

 使用者が座部材に着座したときに使用者の背と当接する当接部材とを備えた

 椅子。

※発明の効果

 着座したときに使用者の姿勢を維持できる。このため、快適に座ることができる。

 メインクレームでは、脚部材を特定していません。

 脚部材はなくても効果を達成できます。座椅子をイメージすればお分かりかと思います。

 

 メインクレームを書いた後、サブクレーム(下位クレーム)を書いていきます。

 サブクレームのポイントは進歩性の落としどころとなるところです。

 サブクレームで追加する構成は、単に先行文献に書いていない構成だけではなく、その構成による技術的意義(その構成であることでそうする効果があること)と、実施例でサポートされていること(材料系の場合)が重要です。

 ここで、クレームを書くときには「曖昧な表現」は避けましょう。

 クレームを書く上で重要なのは、クライアントにも読みやすい文章を書くことです。

 難解な文章を書くのではありません。

 難解な文章を書けば自ずと曖昧で、意味のよくわからない文章となってしまいます。

 曖昧な表現を避けて適切な表現を使うためには、J-platflatなどで似たような公開文献を探し、公開文献中のクレームの表現を参考にしましょう。

 検索ワードを適切なものにかけると大体これで決まります。実際に僕もクレームの表現に迷ったら、公開文献の表現を参考にしています。

 また、カテゴリーはできるだけ豊富に書きましょう。

 物クレームが強いですが、物クレームで特許性が出なくても製造方法クレームや単純方法のクレームに特許性が出る場合もあります。

 カテゴリーを豊富に書けば、それだけクライアントにも好印象です。

 明細書の書き方【明細書の作成準備】

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 では、次に明細書の作成段階について説明します。

 明細書は、以下のように、「起承転結」⇒「具体化」⇒「一般化」の順番で書いていきます。

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 上図を見てください。

 明細書の書き方は発明の分野によって異なります。

 すなわち、明細書は、材料系、構造系、電気系の3つの分野で書き方が異なります。

 ただし、構造系が基本であり、材料系が特異であることから、ここでは構造系と材料系を説明します。

 構造系も材料系も(電気系も)まずは背景技術、課題、解決手段、効果の順序でストーリーを書くことは変わりません。

 しかし、材料系では、実施形態の後に実施例が来るのに対し、構造系では実施例はほぼなく、実施品の説明を図面をもとに説明し、発明が実施品に限定しないことを説明するために一般化します。

 材料系の実施例は、構造系の実施品の説明に相当し、順序で逆(材料系では実施形態(一般化)⇒実施例(具体化)、構造系では実施品(具体化)⇒一般化)であることが分かると思います。

 このように、構造系と材料系は書き方が異なることに留意した方がよいです。

 そして、上図の通り、明細書の書き方は、「起承転結⇒具体化⇒一般化」です。

 では、「起承転結」「具体化」「一般化」について説明します。

明細書の書き方【起承転結(背景技術~効果)】

 まず、「背景技術」「課題」「解決手段」「効果」の書き方について説明します。

 明細書では、まず、背景(従来技術)⇒課題(従来技術の課題)⇒解決手段(発明の構成)⇒効果(発明が有用であること)をこの順序で説明します。

 これは起承転結の型にあてはまります。

 上記の椅子の例でいうと、以下の図のような感じです。

(背もたれ椅子の発明)

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発明者は、上図に示すような背もたれがついた椅子を発明しました。

この発明では、使用者が着座したときに使用者の背と当接部材(背もたれ)を設けることで使用者が姿勢よく着座できることを特徴します。

この発明の構成を分解して構成要素を見ていきます。

・座部材(使用者が着座するための部材)

・当接部材(使用者の背を当接するための部材。背もたれ)

・脚部材(座部材を支持するための部材)

★効果 (使用者が着座した時に姿勢を維持できること)

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 この背景技術~効果までの記載で発明のストーリーはほぼ完成します。

 特許庁の審査官は、たいてい背景技術~効果と実施例しか読まないため、このストーリを丁寧に考えることが重要です。

 背景技術には、本願発明に最も近い先行技術文献のモノを説明します。

 文献の数が多すぎると、審査官に発明のポイントが把握できなくなるため、文献の数は1つでよいです。

 その文献は、本願発明に最も近い先行技術文献を提示します。

 ここで、背景技術の記載で注意すべき点があります。

 それは、公知の情報だけを記載するということです。

 例えば、背景技術に先行技術文献の課題を書いていることがありますが、これは不味いです。

 なぜなら、その課題が公知でないのであれば、それは発明者が見出した課題であり、その課題に対して本発明を導き出したということになるため進歩性が一層認められやすくなるからです。

 このため背景技術の記載は公知のみであることを留意しましょう。

 課題には、提示した先行技術文献の問題点を上げます。

 上図の椅子の場合では、その課題は、着座した時に使用者は姿勢が悪くなることです。

 ここで、課題は、メインクレームの構成のみで解決できるものだけを書きましょう。

 課題を書き過ぎると、クレームの範囲が過度に限定される虞があり、注意が必要です。

 解決手段には、クレームの構成によって課題が達成されることを記載します。

 例えば、発明者は、鋭意研究を重ねた結果、〇〇に〇〇をする(メインクレームの構成)と、上記課題が解決できることを見出した・・・などです。

 効果は課題と対応させます。

 上図の椅子の場合、課題が「着座した時に使用者が姿勢が悪くなる」であれば、「着座した時に使用者が姿勢を維持できる」などです。

 課題と効果は1対1の関係であることを覚えておきましょう。課題にないことを効果で書くのはNGです。

明細書の書き方【具体化】

 次に「具体化」の説明をします。

 材料系の場合は、実施例を、構造系の場合は実施品の説明をします。

 上述のように具体例を書いて一般化を書くのが「大事なところの漏れがなくなり」おすすめです。

 材料系の実施例の場合、クライアントの発明者が準備してくれることがあり、これを推敲します。この場合のポイントとしては以下の通りです。

・実施例と比較例がクレームと整合しているか

・当業者が再現できるように実施方法が記載されているか

・評価の基準が明確に記載されているか

・評価の値の算出方法が明確に記載されているか

・クレームの文言と実施例の文言が適切に統一されているか

 一方構造系の場合、実施品の「図面」を説明します。

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 例えば、上図の椅子の場合には、座部材1、脚部材2、当接部材3について説明します。

 具体的には、この場合には、それぞれの形状、位置関係、材質、作用、効果です。

 より詳細には、以下のように書きます。

図■に示す椅子10は、座部材1と座部材1を支持するための脚部材2と座部材1に使用者が着座したときに、使用者の背と当接可能な当接部材3とを含む。座部材1は、~の形状を有しており、~の材質で形成されている。脚部材2は、~の材質で形成されており、脚部材の数は~である。当接部材3は、座部材の後部に形成されており、~の材質で形成されている。図■に示す椅子10は、座部材1の後部に当接部材3が形成していることにより、使用者が座部材1に着座したときに使用者の背が当接部材3に当接されるため姿勢を維持しゃすく快適に着座できる(作用と効果)。

明細書の書き方【一般化】

 次に、「一般化」の説明をします。

 「具体化(実施例、実施品)」はいわば点の説明です。

 これに対し、クレームはその点から拡張した幅のある円のようなものです。

 具体化だけでは、クレームの範囲にまで一般化できないためそれを埋めるために「実施形態」で実施例又は実施品をクレームの範囲にまで一般化できることを記載します。

 実施形態の書き方のポイントしては、「総論・各論」の型で書くのが書きやすいです。

 上図の椅子の場合には、「座部材」「脚部材」「当接部材」で構成されていますが、この場合、「座部材」を説明して、「脚部材」を説明して、「当接部材」を説明します。

 その後、必要に応じて他の部材も説明します。

 例えば、上図の椅子の例で言うと、下図の椅子もクレームの範囲に含まれます。

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 この形態は、当接部材が「2本のパイプ」を介して、座部材に接続されている構成です。

 この場合は、更に「パイプ」も構成要素に含まれますのでその他の部材に例示します。

 必要に応じて、上図の変形例も説明します。

 「一般化」では、上述のとおり、具体化だけでは、クレームの範囲にまで一般化できないためそれを埋めるという役割がありますが、それ以外にクレームアップできるようなものを仕込んでおくこともできます。

 この点について触れると長くなるので次回にお話ししたいと思います。

特許明細書の書き方【校閲段階】

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 以上のように、クレームと明細書を仕上げたら、ブラシュアップします。

 ここでのブラシュアップのポイントは以下の通りです。

・誤字脱字

・用語の統一(クレームの文言が明細書中に対応しているか)

・クレームが明細書中でサポートされているか

・必須と任意の区別ができているか

(サブクレームなのに明細書中で「断定形」で表現している。あるいはメインクレームなのに「例えば」「好ましい」というように表現している等)

・図面の符号が明細書と対応しているか

 最低、これだけはチェックして修正しましょう。

 これがなされていないと、知財部からの印象は悪いです。

特許の書き方のまとめ

 特許請求の範囲(クレーム)は、たった1文ですが、その1文が莫大な利益を引き起こしたり、莫大な損失をもたらしたりする重要なものです。

 それゆえ、特許請求の範囲を上手く書けるようになれば、相応の報酬を稼ぎ出すことができます。

 もし、特許で収益を上げたいのであれば弁理士を利用することをおすすめします。

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 以上

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